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地域に眠れる移動需要

2013年07月31日 赤石和幸


地域には日々の通勤、通学に加え、高齢者が買い物に出かけたり、子どもを保育園に預けたりと365日24時間、様々な移動ニーズや移動を起点とした消費行動などで創出される移動需要(以下、移動需要という)が存在する。近年では、インターネットで有機農産物や消費財を手軽に購入できるようになった。靴などを試したあとに、返品可能な仕組みも出てきた。わざわざ移動せずに手軽に物を調達できるようになった。これらのように地域の人と物の動きが変わりつつある。

これまで地域での移動は、乗用車に加え、バス、電車といった都市交通が中心であった。しかし、都会では若者が自動車保有コストの割高さにより自動車を購入しないといった自動車離れ現象が起きていたり、地方ではの高齢者を中心に、移動したいが移動できない交通弱者が発生したりしている。カーシェアリングが伸びているのは、これらの声を取り込んだからと推測される。当社の試算ではこれら「地域の眠れる移動需要」やその周辺市場は3兆から4兆円前後存在する。

それでは、これらの移動需要はどのように掘り起こしたらよいのだろうか。第一に、移動目的を喚起する仕組みが必要となる。例えば、スーパーが高齢者の買い物を支援するといった形だ。病院が地域医療の一環としてサービスを提供することも考えられる。第二に、歩道や車道などの公道を移動するため安全性、信頼性を担保した移動体系が必要だ。これら超小型モビリティ開発などで進むセンサー技術などがそのまま活用できる。第三に、利用の自由度を確保することが必要だ。カーシェアなどもあるが、乗る・捨てる場所が限定される、免許が必要など制約も多い。

現在、創発戦略センターでは、「地域の眠れる移動需要の掘り起こし」の研究に注力している。ここで目指すのは、例えばバスや電車、乗用車などに手軽に乗せたり、誰とでもシェアしたり、どこでも乗る・捨てたりすることができる超小型モビリティを活用した、移動の自由度を制約しない移動サービスの実現だ。

日本はEV関連技術である、充電、電池、モーター、自動走行、GPSのどれをとっても世界最高水準の技術を有する。米国シリコンバレーでもスマートフォンを活用した、IT×都市モビリティは再注目テーマになりつつある。本研究会では、こうした日本の技術を活かし、世界的な動きを先取りした、次のような活動を行いたいと考えている。

まず、国内の地方自治体と連携した商品・サービス作りを検討する。次に、ビジネスモデルやプロトタイプの設計を行う。当社では、これらの移動ニーズに応えるサービス創出を行い、地域の眠れる移動需要の掘り起こしにチャレンジしたい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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