IKUMA message
未来を先取りする迫力
2013年06月11日 井熊均
6月5日、安倍首相が成長戦略第3弾を発表すると株価は急落しました。今回の成長戦略の迫力に対する市場の率直な反応と言えます。既に、テレビや新聞で報じられているように、数字の目標はあるものの、それをどのように実行するかが分からない、これまでの政権が示してきた戦略と大きな違いがない、ように見えるのが理由です。 異次元の金融緩和がもたらしたいっときの猶予の間に、日本が実効性のある成長戦略を掲げた、と市場に評価されるためには具体性と政府の覚悟を示す必要があります。それさえあれば多くの分野をカバーする必要はありません。一つの戦略が市場の信頼を得たら、具体性と覚悟のある次の戦略を出して行けばいいからです。 今回の戦略の中で、自分がかかわっている分野について言うと、まず、PFIは元来公共投資の抑制策としての性格があります。これを成長戦略とするためには、利用効率の低い公共資産を最大限有効活用するか、インフラ輸出と一体化して日本で生まれた事業を元手に海外で稼ぐしかありません。前者について言えば、高速道路の空中権を利用するのもいいですが、東京の一等地で効率の悪い土地利用をしている霞が関を官民で一体開発する、と言い切った方が効果的なのではないでしょうか。 電力分野については、原発が再稼働すれば、日本の電力供給は過剰気味になるので、電力システム改革を進めても、発電投資が単純に増えるとは言えません。今、電力分野の技術開発で最もフロンティアなのは、需要家サイドの分散システムです。ここに焦点を当て徹底的な規制緩和を行い世界に先駆けた異次元の都市空間を作ると言えば、先端技術の投資が進むでしょう。 PFIと電力分野に共通しているのは、欧米が10 年以上前に行った改革のキャッチアップと成長戦略がやや混同されていることです。周回遅れの改革を成長に転じるためには、未来を先取りする一点集中の具体策と反対派を蹴散らすくらいの迫力が必要なのです。 | |
[ Ikuma's Photo ] 電力システム改革の方向性は概ね合意されています。 規制緩和が進めば2020年に向け成長性のある大市場が拓かれます。 「2020年、電力大再編 電力改革で変貌する巨大市場」(日刊工業新聞社) |
※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。