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CSRを巡る動き:気候変動への適応と水マネジメント

2013年06月01日 ESGリサーチセンター


 2013年4月12日、文部科学省、気象庁、環境省は、「日本の気候変動とその影響(2012年度版)」を公表しました。これは、日本を対象として、気候変動の観測・予測・影響評価に関する知見を取りまとめたものです。「気候変動にどのように適応するか」ということは、中長期的な企業経営を考えるにあたりすでに避けて通れないテーマですが、この報告書はその拠り所にされるべき情報を網羅しているといえるでしょう。

 気候変動の影響は多岐に亘るといわれますが、「水」を通して現れてくる現象の多さが目立ちます。もう既に、人口の増加や新興国の経済成長、都市の拡大により、水不足や安全な水の確保は世界的な環境問題です。ただし、日本国内ではなかなか実感されにくい問題でもあります。確かに、国内に限っていえば、製造業の海外移転や人口の減少により給水量が減少しはじめており、省エネルギー法のように水の合理的な利用を促す規制もありません。よほど水への感度の高い業種(飲料や水インフラ関連事業など)や節水をビジネスチャンスにしようとする業種(家電や日用品など)でもない限り、積極的に関心を寄せるのは難しいかもしれません。

 しかし、上述の報告書では、日本においても降水特性の変化、水温の上昇、海面上昇を通じて、河川流量の変化、水質の悪化、地下水の塩水化などの影響が出ると予測しています。一部で河川流量が減少する可能性が指摘されており、渇水リスクが増加すれば、飲料水、工業・農業用水への悪影響が懸念されます。これまでのように、「日本では水のことは心配ない」という常識が徐々に崩れていくことが予測されているわけです。

 「渇水」は「停電」と性格を異にします。電気なら、代替原料(資源)を調達して自家発電したり、電気以外のエネルギー源を用いたりすることが可能ですが、水は他で代替することが容易ではありません。他の地域から(大量に)運搬してくるのも困難です。渇水リスクは、まだ科学的にその程度や頻度を“予測”する精度に達してはおらず、例えば国土交通省の「気候変動による水資源の影響検討会」でも利根川、筑後川、吉野川をモデルに、将来の渇水の分析や深刻な渇水時における影響の推定を継続的に検討する段階です。しかし、数年前と比べれば具体的に検討が始まっているとも見ることができます。既にエネルギーマネジメントの仕組みを構築した企業では、次は水についても、リスクと機会の両面からマネジメントの対象として捉えるべきではないでしょうか。
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