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古くて新しい公共交通サービス問題

2013年02月26日 青山光彦


筆者は官公庁や地方自治体の業務を行う中で、地方の過疎地や離島の現地視察に赴くことがある。そこで見かけるのは、タクシーやバス等の公共交通機関の撤退やサービス低下、一人1台の自家用車保有が当たり前という状況だ。

これは由々しき問題である。というのも、こうした地域で今後高齢化がさらに進むと、潜在的な交通弱者(自家用車を持たない・自家用車を運転できない人)が顕在化し、交通問題はいよいよ現実的な課題として我々の社会に直面することになるからだ。交通弱者は日常で行動する範囲が自宅周辺のみになったり、特定の場所(例: 病院―自宅)に限定されたりすることにより、必要な生活必需品の確保や生活サービスの享受ができなくなる可能性がある。これは高度成長期に開発が進んだニュータウン等でも同様の問題が生じる。

一部の地域では、地域の実情に合わせた地域公共交通のあり方が模索されている。例えば、岡山県総社市では、交通弱者対策として地域店舗からの特典サービスとも連動させたデマンド型の乗合バスが、平成23年4月から運行開始している。また、鹿児島県薩摩川内市では、市域を横断するシャトルバスが平成22年11月から運行しており、従来から地区ごとに存在するコミュニティバスが「毛細血管」ならばシャトルバスは「大動脈」の役割を担っている。

こうした公共交通サービスの問題は実は古くから言われていることであるが、最近スマートフォン等IT機器の普及や、HEMSによる家庭内生活情報のプラットフォームの実現により、利用者の目線に立った公共交通サービスの展開が加速する可能性がある。またデジタルだけでなく、従来のアナログ式の延長上の新たな公共交通サービスの展開も考え得る。

前者の場合、例えば利用者の移動に関するデマンド情報(希望日時、乗降場所の許容エリア範囲、支払料金条件)と、交通事業者の移動に関するサプライ情報(車両運行予定、運行可能なエリア範囲、乗客数条件)を情報端末で入力・データ管理によりマッチングさせることも可能だろう。後者の場合、貨客混載型の陸運システムの導入可能性がないだろうか。例えばイギリスではポストバスと呼ばれる、郵便集配車が高齢者を乗せ、地方都市と集落間を輸送するバスが存在する(日本国内では、適用法令上の制約があり現在は実現していない)。

将来的には、タクシーやバスといった公共交通だけではなく、レンタカー、カーシェアリング、超小型モビリティ等の交通関連事業者のほか、生活系サービス事業者(宅配・郵便業者、商店・スーパー等)、地域住民、行政とも連携した取り組みが望ましい。そのためにも、地域ニーズを踏まえ移動目的と移動先に合わせてシームレスな移動が可能な「新地域公共交通サービス」のあり方を示すグランドビジョンを策定し、関係者で共有することが重要となるだろう。それに向けて、交通事業者の再編が広がることも今後予想される。

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