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サステナビリティ諸課題解決を株主に訴求する企業

2013年01月29日 小崎亜依子


日本総合研究所では、2003年より上場企業を対象として環境・社会側面を中心とするサステナビリティ諸課題解決に関する取り組みの調査を実施している。ここではそうした取り組みを主に開示する媒体であるCSR報告書に加えて、株主向けの媒体からの情報収集も行っている。株主向けの媒体を使うのは、企業が株主価値向上のために実施しようと考えている事項に「サステナビリティ諸課題解決に関する取り組み」が含まれているかを確認するためだ。

これまでは、CSR報告書でサステナビリティ諸課題解決へのコミットをトップが表明していても、株主向け媒体では触れられていない、もしくは触れていたとしてもほんの一部というケースがほとんどであった。しかし、最近になって株主向け媒体にサステナビリティ諸課題解決に関する取り組みを全面に打ち出す企業が出現してきている。

例えば、ある医薬品メーカーは、IR資料において、医薬品アクセス問題への対応を全面に打ち出している。医薬品アクセス問題とは、発展途上国を中心に、医薬品が高価であることや医療システムの不備などにより、必要不可欠な医薬品へのアクセスが富裕層などに限られる問題のことを言う。HIVエイズ、マラリア、結核の3大感染症に加え、顧みられない熱帯感染症は、発展途上国にとって依然として大いなる脅威である。同社は、顧みられない熱帯感染症の治療薬を無償で提供することを表明。こうした取り組みは社会貢献ではなく、途上国の市場開拓に向けた「長期投資」だとしている。

また、ある化学メーカーは、「“KAITEKI”を実現するカンパニーでありたい」との新たなビジョンの下、Sustainability(環境・資源)、Health(健康)、Comfort(快適)を重要な活動領域を位置付け、それぞれの活動の具体的な数値目標をKAITEKI指標として中期経営計画に盛り込んでいる。ある外食チェーンは、お店がきれいになる、地域ファンが増えるという理由で、女性店長登用を店舗拡大戦略の中心に据えている。

このように、株主価値向上のためにも、「サステナビリティ諸課題解決への貢献」をうたう企業が増えつつある。定量化が困難で、場合によっては効果が表れるのに数年かかるこうした取り組みを、株式市場はどのように評価していくのか。株主と企業の新たな関係構築への模索が始まったとも言える。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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