オピニオン
CSRを巡る動き: COP18,全員参加の枠組みづくりを
2013年01月07日 ESGリサーチセンター
国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)が11月26日、カタール・ドーハで開幕しました。先進国の温室効果ガス排出削減目標を定めた京都議定書が年末で期限切れになることもあり、次のステップとして「第2約束期間」の新たな削減目標や実施期間をどうするか、さらに2020年以降の温暖化防止の新枠組みに向けた作業計画をどう詰めるかが焦点となっています。
しかし、新枠組みに関するこれまでの議論では、数値目標が義務付けられることに抵抗する米国、そして中国などの新興国・途上国と、強制力を伴う仕組みを求める欧州との間の意見対立が続いてきました。COP18においても、2020年以降の新枠組みをめぐって、事務レベル協議を通じて作業計画案がまとめられ、4日から始まる閣僚級会合で合意を目指すとしていますが、新興国・途上国との溝を埋めるのはたやすいことではありません。
温暖化対策の議論はここのところ混迷の状況が続いています。2011年に開催されたCOP17でも、「2020年には新枠組みを発効させたい」ということが決まっただけで、具体的内容に関する議論は持ち越しとなりました。中国に次ぐ排出量大国となりつつあるインドも、「先進国が排出削減の主たる責任を負うべきだ」として、削減義務を課されることに反対し続けています。一方、日本は昨年、京都議定書の延長には参加しないという決定を下しました。これは昨今の世界情勢を踏まえれば、やむをえない結論とも言えます。国別CO2排出量(2009年)を見ると、中国が約70億トンで1位(24.0%)、2位は米国53億トン(18.1%)と続いています。日本では2008年から翌年にかけ、金融危機の影響で景気が悪化し、排出量がやや減ったためCO2排出量は約12億トンとなりました。この量は世界の排出量の3.8%程度に過ぎません。かたや中国では2000年以降、排出量は指数関数的に増加しており、日本の6倍ものCO2を排出しています。最新の統計によれば、中国の排出増が大きく影響し、2009年から2010年にかけて世界のCO2排出量は約19億トン増え、年間の増加量は過去最高を記録したと言われています。世界規模で温暖化対策を考えるのであれば、排出量の多い国の協力なくして実効性のある仕組みにはならないことは事実です。
ただ、後ろ向きな国ばかりではありません。新枠組みづくりを前進させるメッセージを発する国も出てきました。COP18が開幕した26日に、オーストラリア政府は、京都議定書の第2約束期間での排出削減目標を明らかにしました。期間を8年間とすることなどを条件に参加し、2013~2020年に1990年比で年平均0.5%削減することを目標としています。オーストラリアのCO2排出量(2009年)は、世界の排出量の1.4%に過ぎませんが、こうした国が前向きな姿勢を示したことは評価すべきです。また、温室効果ガス排出抑制のための規制の勢いは世界的に見て停滞しているのではないか、という指摘をよく聞きますが、必ずしもそうばかりとは言えません。ノルウェーでは、環境税の税率を2倍に引き上げるなど温暖化対策の手綱をさらに引き締めています。これまで規制反対の姿勢を貫いてきた米国でも、11月に米東海岸を直撃したハリケーン「サンディ」の影響で気候変動への関心が高まり、オバマ大統領自ら、大統領選の勝利演説で地球温暖化の脅威について触れています。
どの国も自国の利害だけを考えるのではなく、世界規模で対策を考えるべきときが来ています。日本ももちろん、議定書上の約束がないからといって、温暖化対策の手綱を緩めてはなりません。日本政府は、これまで環境技術の海外輸出や途上国の排出削減への貢献を強調してきましたが、COP18では、途上国から、第2約束期間に不参加の国にCDMを使わせるべきではない、との意見が出たと報じられています。日本の今後の温暖化対策に国際社会の厳しい目が向けられています。この構図は企業も同じです。その企業が社会に与える環境負荷の大小を問わず、また規制の有無を問わず、できることを前向きに考えていく姿勢が今後求められると考えられます。そうした発想を有し、取り組みの実践を重ねていく企業こそが、CSRの観点から「注目すべき企業」と位置づけられるでしょう。