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中国富裕層によるソーシャルビジネスへの関心の芽生え

2012年08月15日 菅野文美


中国は、今や、アメリカに次ぐ富裕層の創出国である。フォーブス誌の2012年世界長者番付には中国人95名の名が連なる。中国の富裕層の特徴は、年齢が若く、ファミリービジネスを立ち上げた一代目であり、現役の経営者として強い決定権を握る人が多いことである。

今、その中国の富裕層の間でソーシャルビジネスへの関心が芽生えつつある。ここでいう「ソーシャルビジネス」とは、収益だけでなく、コミュニティや環境の問題解決を目的とする事業である。

その背景として、まず、中国富裕層の間で、フィランソロピー(非営利団体等に寄付する活動)への関心が高まってきたことが挙げられる。近年、食品の安全についてなどの不祥事の報道が増え、中国の富裕層は、政府や市民の企業の社会的責任を問う厳しい目に対応するため、フィランソロピーを自らのPR戦略に組み込むようになった。
そして、フィランソロピー活動をする中で、ソーシャルビジネスに興味を持ち始める富裕層が少しずつ出てきている。

その理由は主に3つある。一つ目は、富裕層はフィランソロピー活動の費用対効果が往々にして低いことに不満を感じ、ビジネスの手法を用いた方が効果的かつ持続的な場合があると考えるようになったからである。二つ目は、若い現役経営者である彼らにとって、PR費として消化するフィランソロピーよりも、自分の企業の収益創出の機会をもたらすソーシャルビジネスの方が魅力的だからである。三つ目は、富裕層は、自分の企業のうなぎ上りだった成長率が低下する中で、するには収益につながらなくとも、ビジネスの新しい手法や新領域を模索する可能性をソーシャルビジネスに期待するからである。

昨年、社会的課題の解決をテーマに世界各界のリーダーが会するクリントン・グローバル・イニシアティブにて、中国の富裕層たちが、コカ・コーラ社のアフリカにおけるManual Distribution Programを聞き、「これだ!」とひざを叩いたという。コカ・コーラ社は、金融サービスやビジネストレーニングを提供して、自転車などで都市部の小売店に飲料を卸す起業家を育て、雇用創出に貢献すると同時に、自らのアフリカ大陸における販路を伸ばしている。

日本総研は、日本企業に対し中国や他国におけるソーシャルビジネス立ち上げを支援している。こうした経験を活かし、今後、中国の富裕層にもソーシャルビジネスに関する情報を発信していきたい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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