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地域の維持を

2012年09月13日 井熊均


夏休みに函館に行ってきました。

函館の歴史は15世紀まで遡るようですが、現在の街並みづくりの契機となったのは1854年の開港です。今でも、函館山の裾野には教会、領事館、迎賓館など歴史をしのばせる建造物が立ち並び、海岸から何キロか奥に入ると北の守りとして建設された五稜郭があります。世界の三大夜景の一つといわれる函館山からの絶景も開港以来の歴史の賜物です。

素晴らしい夜景や歴史の足跡、美味しい海産物に魅了され、お盆を過ぎたのに、函館の街は観光客で賑わっていました。しかし、一方で、30万人弱の人口は少しずつ減り始めていると聞きました。これからは、人口が減る中で歴史的資産をどのように支えていくかを考えなくてはなりません。

仕事で頻繁に海外に出かけますが、日本の街並みや自然は本当に美しいと思います。今、それをどうやって守っていくかが問われ始めています。もちろん、これまでも様々な施策が講じてこられてきました。しかし、そこに投じられた資金と現状を比較すれば、我々は何かを間違ったのではないか、という思いに至ります。例えば、地域振興の名の下に建設された建物が、地域の元来の魅力を高めなかったどころか負担になっているような例は全国随所にあります。日本人自身が、財政が逼迫し、人口が減り始めるまで、本当に残すべき日本の良さを明確に意識できなかったのかもしれません。

ドイツは第二次世界大戦で日本以上に破壊された街並みを大戦前と同じように復元することに力を注いだといいます。制約条件が年々増える今の日本にできることは、日本の良さをもう一度見直し、身の丈に合った維持の方法を考えることです。時代が求めているのは、負債の上塗りをする振興策ではなく、地域を維持していくためのコンセンサス作りなのだと思います。

[ Ikuma's Photo ]
函館の大沼から駒ケ岳を望みます。ここからの風景を見て、千の風の歌が生まれたそうです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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