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高齢化が進む中国の新たなビジネスチャンス
-在宅シニア層をターゲットに-

2012年07月10日 耿莉莉


中国では高齢化が進む一方、平均定年退職年齢が低いため、自由時間を持つ元気なシニアが増えてきている。
平均寿命については、年率約10%という経済成長に伴い生活が豊かになり、平均寿命も1982年に67.8歳であったものが、2000年には71.4歳、2010年には73.3歳まで伸びている。一方、平均退職年齢は55歳程度にとどまっている。定年退職年齢は男性60歳、女性50歳(幹部は55歳)となっており、実際の平均退職年齢は53歳である。中国では、60歳以上を高齢者と呼ぶが、ここでは定年退職後の55歳以上を広く「シニア」ととらえ、そのビジネスチャンスについて提言したい。2010年の中国のシニア層の人口は2億8,000万人に上ると言われ、シニアビジネスを富裕層と中間層に限ったとしても、その市場規模ははるかに日本を上回ると考えられる。

最近、日本企業は中国の介護・有料老人ホーム事業に続々と進出している。例えば、ロングライフホールディング(株)は、2011年11月に山東省青島市に有料老人ホーム「新華錦・長楽国際」を開設した。中国にはなかった高級感あふれる施設、高度な介護サービスや医療サービスなどの提供を売りとしている。入居費は、終身会員制の場合140万元~256万元/人(約1,800万円~3,200万円/人)、家賃制の場合は月8,000元/人(約10万円/人)からと、超富裕層が対象となっているのが特徴である。

一方、富裕層以外に目を向けると、今後多くの在宅シニアが発生することが見込まれる。2009年1月に北京市民政局などが提起した「9064」という高齢者サービスに関するモデルでは、2020年までに高齢者の90%が公的機関にサポートされたサービスによる在宅介護を実現し、6%が市政府の出資によるコミュニティ(社区)のサービスを受け、4%が老人ホームに入居して生活することが示されている。これは親が子供を育て、子供が親の面倒を見るという中国の伝統的な扶養・養育スタイルに合致している。退職直後の55歳以上を含めると在宅者の割合はさらに高くなると考えられる。また、社会保障や年金制度の完備により、在宅シニアは経済的に安定した余裕のある生活を送ることが出来ている。

これらのシニアは、自分の生き甲斐や社会参加などのチャレンジ的な活動及び健康維持に関するニーズが旺盛である。例えば、私は知り合いのシニアから、雲南省の奥地やチベットなどの辺境に旅行したいが体力に自信がない、という悩みを聞いたことがある。また、定年退職をきっかけに自宅で書道や絵画を始めた人も周りに多い。日本企業はシニアビジネスの先行者として、余暇の活用や健康維持増進分野のノウハウを数多く蓄積している。これらのノウハウを生かし、今を楽しく生き、充実した人生を満喫したいという中国在宅シニアのニーズに応えることができれば、大きなビジネスチャンスとなる。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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