コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

IKUMA message

国民の信頼の再構築を

2012年07月10日 井熊均


国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の最終報告書がまとめられました。「(同事故は)自然災害ではなく明らかに人災である」と断定するなど、先に公開された民間事故調の報告書と比べても厳しい内容になっていると思います。民間事故調とは見解が違う点もありますし、表現の異なるところもありますが、共通しているのは原子力発電のガバナンス機能への厳しい指摘です。

福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こしてはならない、という指摘に反対する人は日本中に一人もいないでしょう。問題は、そのことを実現するのに具体的に何をすればいいのかです。二つの報告を読むと、日本は政策を書いた後、その実効性の検証や実行のために必要な体制づくりを怠り、政策を遂行するための継続的な議論やコストの負担を避けてきたことが分かります。ハードにばかり資金を投じ、人材を含むソフト面の備えができてない、という古くからある日本の問題とも言えます。同じように、机上論に過ぎない政策はいろいろな分野に数多くあるはずです。それだけ国民生活がリスクを抱えているということでもあります。

程度の差はあれ、原子力発電への過度の依存を避けることは既にコンセンサスができているものと考えます。しかし、再稼働問題を見ても、そのための具体的な方策が冷静に議論できているとはとても言えません。政策運営を誤れば、国民生活と経済、政治、行政の間に深い溝を作ることにもなり得ます。それは東日本大震災で世界中が評価した日本の良さにくさびを打ち込むことにつながるように思えてなりません。政府は報告書に書かれた趣旨とその裏にある政策運営の問題を真摯にとらえ、国民の信頼の再構築につながる策を講じてほしいと切に願います。

[ Ikuma's Photo ]
千葉県松戸市小金にあす日蓮宗本土時のアジサイです。広い管内には、アジサイが咲き乱れ、「アジサイ寺」として多くの人が集まります。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ