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次世代エネルギー

2012年06月13日 井熊均


野田首相は関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機の再稼働に向けた判断を表明しました。背景には昨夏の東京電力管内での企業の節電に対する厳しさを踏まえた関西経済界の強い危機感があったとされます。日本経済を取り巻く環境を考えれば、首相として判断を下し、国民に対して語ったことについて一定の見識を感じます。しかしながら、これをもって原子力発電所の稼働に向けた動きが出来たと考えることはできません。

「東日本大震災と同じような天災が起こった場合でも原子力発電所が安全なのか」という国民の不安に応えるための、事故の解明、どのような規模の天災が起こり得るかに関する専門的な研究、これらに基づく対策と安全性、が国民に分かりやすく説明されていないからです。再稼働が今夏に限ったものかどうかは、これらに対する検討が進むかどうかにかかっています。

現代社会は、まさにエネルギーに支えられた社会です。その意味で、どのようなエネルギーの技術を維持し、育てていくかは、10年単位の計であってはいいはずがありません。重要なエネルギー源をどう扱うかについては、一世代の判断が超長期にわたり社会に影響を与えるのです。

日本が先進各国に対して遅れてきた再生可能エネルギーの導入に力を入れるべきであることは論をまちません。しかし、それとて限りあるエネルギーであることに変わりはありませんし、基幹エネルギーになるためには検討しなくてはいけないことがたくさんあります。また、多くの人口を抱える新興国が世界の主要な市場になろうとしていることを考えると、人類のエネルギー需要がどこまで伸びるかについて楽観視はできません。

我々が次世代に対してすべきなのは、原子力発電による汚染だけでなく、温暖化や資源の枯渇なども含め、エネルギーにまつわるリスクをできるだけ小さくした上で、選択肢を次世代へとつなぐことです。問題は、エネルギーのマクロな枠組みを議論する場がないことです。技術に偏向した政策議論がいかに危険かは、原子力ムラが今回の事故に大きな影響を与えた経緯を見ても分かります。

原子力発電のリスク評価と並行して、次世代に向けたエネルギーに関する議論の場ができることを期待します。



※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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