「アジア主要都市コンシューマインサイト比較調査」結果
~アジア主要7都市は東京に比べて消費意欲が旺盛
安さだけを求めるのではなく、さまざまな付加価値の有無が選択基準に~
2012年05月28日
各位
株式会社日本総合研究所
●【耐久消費財】三種の神器など一定の「モノ」をすでに所有 ●【住宅】アジア主要7都市の住宅に最も求める価値は類似 ●【子ども】「子ども」に関連する消費への積極性は東京と同等かそれ以上 (注1)本調査では、経済産業省「通商白書2009」で定義された分類にならい、世帯年間可処分所得5,000~35,000米ドルを「中間層」と設定 |
上記以外にも、「健康・医療」「観光旅行」の消費状況、「都市のインフラ」満足度を調査した。
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 藤井順輔、以下「日本総研」)では、2011年12月、アジア市場における消費動向を把握するため、「アジア主要都市コンシューマインサイト比較調査」を実施しました。
近年、アジアがその人口ボリュームや経済成長を背景に注目を集めています。また、アジアにおける都市の人口集中は進み、日本企業にとって、アジア大都市は消費市場としての魅力が高まるばかりです。しかし、都市レベルの消費動向データは少なく、消費動向の理由やその背後にある消費価値観まで分析することは容易ではありません。このため、日本総研では、アジア主要都市の消費動向に関する定量情報を収集してわが国と比較分析することを目的に、アジア主要7都市と東京に住む「中間層」(世帯年間可処分所得5,000~35,000米ドル)以上の20代~40代男女に、以下の各トピックについて質問しています。
●世帯の特徴
●耐久消費財の保有状況・購入意向
●「健康・医療」・「住まい」・「子ども」・「観光」分野における消費状況・消費ニーズ
●各種「都市インフラ」に対する満足度
アンケート概要
■調査目的: アジア主要都市ボリュームゾーン消費者の消費動向・価値観を、東京と比較分析すること
(注2)各都市の回答者数は500人。ただし、クアラルンプールのみ454人で、( )内はクアラルンプールの回答者数。分析時は、性年代別に回答者数の補正処理(ウェイトバック)を行い、500人として集計。 |
主な調査結果
【家電や自動車など一定の「モノ」を既に所有している】
●既に60%以上の世帯で「三種の神器」全てを所有
アジア主要7都市の「中間層」以上世帯では、60%以上がかつて日本で「三種の神器」と呼ばれた冷蔵庫・洗濯機・テレビを「全て」所有している。また、エアコンの所有率は60%、薄型テレビは50%を超え、全都市で普及の最終段階に入っている。
●ホーチミン・シンガポール以外は、60%超の世帯で自動車を所有
ホーチミン・シンガポール以外の5都市における自動車所有率は、60%を超えている(シンガポール・東京: 約50%、ホーチミン: 20%弱)。また、上海・ムンバイ・クアラルンプール・ジャカルタ・ホーチミンにおける外車の5年以内購入意向率は約30%と東京の3倍以上で、単に「クルマが欲しい」段階から「より良いクルマが欲しい」段階に足を踏み入れ始めている。
【個人の買い物において最も高価な「住宅」は、70%前後の持ち家率にもかかわらず、購入意向が高い。また、アジア主要7都市の住宅に求める価値は類似】
●持ち家率は70%前後、上海では80%を超える
持ち家率は70%前後に達しており、特に上海は80%超。なお、東京は約50%に留まる。
●住宅購入意向はムンバイで60%弱、他都市でも20~30%
3年以内の住宅購入意向率をみると、ムンバイで60%弱、他都市でも20~30%と東京の約10%に比べて高い。
●住宅に求める価値は「生活環境」「周辺環境」「住宅価格」と類似
住宅購入時の最重視項目には、全ての都市で東京同様、「生活環境(買い物に便利、など)」「周辺環境(治安がよい、など)」「住宅価格」が上位に並び、共通するニーズであることが分かる。ただし、各都市で東京と異なる傾向も見られ、例えば、「価格上昇期待」は東京では14項目中最下位(「親類の近く」と同率)で約1%に過ぎないが、シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタでは10%前後となっている(図表1)。
図表1 住宅購入時の最重視項目の選択率(上位5位まで)
(注3)東京における上位5項目のセルを網掛け表示している。
n=2,320 (「3年以内に購入を予定している」「購入したいし、いつか購入するだろう」と答えた回答者)
【「子ども」に関連する消費にも積極的。習い事は進学塾一辺倒ではなく、外国語やスポーツなど、バランスの取れた教育を志向する意識が読み取れる】
●所得に占める「子ども」関連支出の割合は、軒並み東京の約2倍以上
可処分所得に占める19歳以下の子どもに関連する支出(最も支出の多い子ども一人あたりの金額で、学校、習い事、娯楽・玩具など)の割合は、全ての都市で10%前後と東京の約2倍以上で、子どもに関連する消費への熱心さが推察される。
●習い事は進学塾一辺倒ではなく、バランスの取れた教育を志向
アジア主要7都市の「習い事をする」比率は80~90%と、東京(80%強)と同等かそれ以上。特に上海・ムンバイ・ジャカルタ・ホーチミンは東京を10ポイント以上上回っており、親の熱心さが分かる。
習い事は進学塾一辺倒ではなく、小学生の子どもをスポーツ(図表2)に通わせる世帯も多いことから、バランスの取れた教育を志向する意識が読み取れる。また、中高生の「外国語」を習う比率をみると、英語が公用語ではない4都市は50~70%(上海・ジャカルタ: 70%弱、ホーチミン: 60%強、バンコク: 50%)と東京(10%弱)の5倍以上で、英語習得への熱心さがうかがえる。なお、英語が公用語の都市でも、シンガポール・クアラルンプールは東京のおよそ2倍となる20%前後に上った。
図表2 小学生の子どもに運動系の習い事をさせている世帯比率
n=785(小学生の子どもがいる世帯)
図表3 中高生の子どもに学習系の習い事をさせている世帯比率
n=648(中高生の子どもがいる世帯)
調査の詳細につきましては、別紙(「アジア主要都市コンシューマインサイト比較調査」結果概要)をご参照ください。
本件に関するお問い合わせ先
総合研究部門 社会・産業デザイン事業部
シニアマネジャー 新角耕司
リサーチアナリスト 富田奈央子
E-mail: rcdweb@ml.jri.co.jp