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エネルギー対策

2012年04月10日 井熊均


政府は原子力発電所の再稼働に関する判断基準を示しました。全電源喪失防止のための対策、東日本大震災級の地震や津波への対策、さらなる安全対策の実施計画が盛り込まれていますが、批判もあります。その多くは、内容の是非ではなく、検討のプロセスに対してだと思われます。

東日本大震災以来、原子力発電を含むエネルギー政策を抜本的に見直すことの必要性が指摘されてきました。にもかかわらず、震災後一年を経ても、政策や原子力発電の位置付けに関する基本的な枠組みが出てきません。その裏には、過去にもいくつかの問題をもたらした、この国の性があるように思えます。重大な問題が起こった時、さまざまなステークホルダーの主張が入り乱れ、問題の徹底的な分析や本質的な対策が封じられてしまう、という構造です。著作でも述べていますが、原子力発電自体については、エネルギーの技術を性急な判断で断ってしまうことに警鐘を鳴らしてきました。しかし、それが国民に受け入れられるためには、日本がこうした性から脱することが前提となります。

最近、南海トラフで発生する巨大地震の影響が発表されました。どのような対策をしたらいいか戸惑うほどの内容です。しかし、問題の徹底的な分析と本質的な対策立案のためには、各分野の専門家が政治や経済におもねることなく検討を行い、発言する社会的な風潮が必要です。目先のことを考えれば、専門家が政治や経済の現場の状況をおもんばかることは合理的に見えますが、長期的な視点に立つと、社会が大きなリスクを内包することにつながるように思うからです。回り道のように見えますが、複数のセクターが独立して発言し得る社会としての思考・判断形態を創ることが日本を取り巻く難しい問題を解決に導くのではないでしょうか。

[ Ikuma's Photo ]
自宅近くにある、県内随一と言われる千葉県市川市の法華経寺の桜です。春になると桜を愛でる文化、素晴らしいですね。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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