IKUMA message
東日本大震災から一年を経て
2012年03月13日 井熊均

11日には日本各地で慰霊のための式典などが催されました。それほど、この震災が日本人の心に与えた影響は大きかったのです。天皇陛下のお言葉にあったように、国民の多くが震災の記憶を長く子孫に伝えなくていけないと思っているはずです。
この一年間を振り返ると、日本には変化の兆しが出てきた面と問題が先送りされた面があります。前者については、例えば、消費税を含めた一体改革、あるいは長らく続いてきた電力事業の独占体制に関する本気の議論が始まったことが挙げられます。いずれも、旧態たるイデオロギーや既得権を変革する大切なテーマです。一方、これらは他先進国では10年以上前から行われている施策でもあります。日本は震災を契機に、ようやく周回遅れの改革の議論を始められた、ということもできるのです。
先送りされている代表的な分野が福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性汚染土壌の処理策です。政府は放射性汚染された土壌を地元で仮置きした後、福島県内で30年間中間貯蔵し、最後に県外で最終処分する、としています。しかし、中間貯蔵施設や最終処分場の立地の選定は困難を極めるでしょうし、その間にも被災地の負担は増していきます。放射性汚染された土壌の問題を解決できる可能性のある唯一の策は、信頼性の高い技術により土壌が発生した地域で粛々と分散処理を行うことです。そのためには、巨額の資金と制度整備が必要になりますが、問題の先送りを防ぐことができます。
汚染土壌の問題は一例ですが、目先の負担に戸惑うことなく、問題解決に向けた毅然とした姿勢を示すことが国内外からの信頼を得ることにつながるはずです。
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新しい東京本社の前にて撮影しました。
※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。