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資産を活かす動きを

2012年02月15日 井熊均


今年の冬は例年以上の厳しい寒さに見舞われました。その中で、心配されていた電力の供給不安については、深刻な問題もなく何とか乗り切ることができそうです。一方で、今年の夏は昨年以上に電力が不足する可能性があります。まず、日本中の原子力発電所が定期点検からどれだけ立ち上がるかが見えていません。場合によっては全国的に電力が不足し、地域間での電力融通が昨年以上に難しくなる可能性があります。また、東日本大震災で低下していた生産が回復する、それほど暑くなかった昨年の夏以上に気温が上がる可能性がある、といった需要増のリスクもあります。

厳しい状況ですが、我々には昨年より有利な点が三つあります。
時間と経験と意識です。昨年は震災の混沌後、電力不足のリスクが認識されてから夏までの時間が短過ぎました。加えて、電力不足の司令塔となるべき官庁も震災や原子力発電所事故の対応に追われて対策に投じる十分な時間を取ることができませんでした。次に、多くの企業が「もうこんな苦労はしたくない」という負担を負いつつも、節電のためのいろいろなノウハウを培ったことは確かです。さらに、国民も企業も節電の意識は1年前よりはるかに高まっています。

本来なら、今頃、目先の電力不足のみならず、将来に向けたエネルギー政策の枠組みが見えていてしかるべきです。しかし、実際には、諸説百花繚乱、新旧勢力のせめぎ合いの中で、新たな方向性が見いだせないのが現状です。例えば、新幹線の電源と家庭の電源を十把ひとからげにした議論、需要構造も考えずにエネルギー源の数字合わせに終始する議論、といった古い枠組みの取り組みが続いています。

国の基本インフラの計画の作り直しですから、多少の迷走があるのは仕方ありません。しかし、季節はそれを待ってくれません。心ある政治、行政が企業、国民と力を合わせ、上述した資産を活かす動きが出てくることを期待します。

[ Ikuma's Photo ]
今年の冬に軽井沢で撮った浅間山です。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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