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呪縛からの脱却
2012年01月11日 井熊均

本年もよろしくお願いいたします。
関東地方では快晴が続く毎日で年を明けましたが、日本を取り巻く環境は、記憶にある限り、かつてない厳しい状況にあります。そこに共通するテーマは、この20年間日本を呪縛してきた幻想や取り繕いからの脱却、ということではないでしょうか。
例えば、財政問題。野田首相が身を挺して消費税の増税を進めようとする姿には政治家としての信念を見る気がします。一方、増税についてはいまだに、景気回復や歳出削減優先との声があります。景気回復については、日本経済を巡る情勢が年々厳しさを増す中、この20年間出来なかったことを実現できるとも思えません。歳出削減については、もちろん削減余地はありますが、財政状況を転換するほどのものにはなりません。あるとしたら、身の程以上に寛容であった社会保障の問題くらいではないでしょうか。
最近は少なくなりましたが、内需への期待もありました。1980年代以来取り組んで来たテーマですが、大小のバブル期以外に、これといった成果があったようには見えません。当面復興需要はあるものの、世界経済の中で地位の低下が避けられない日本には、世界で稼ぐ、という明確な方針が必要です。
呪縛からの脱却は我々自身にも求められていると認識しています。シンクタンクやコンサルティング会社、あるいは創発戦略センターに求められていることは何なのか、を過去に縛られずに考えなくてはなりません。国が変われるかどうかは、詰まる所、そうした組織や個人がどれだけいるか、にかかっているのではないでしょうか。この一年、そのことをしっかりと捉え、気持ちを一つにして取り組んでいきたいと思います。
※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。