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【ESG投資の注目点】障がい者雇用を考える

2011年07月01日 ESGリサーチセンター、小崎亜依子


温室効果ガス排出量、環境事故件数、従業員勤続年数、育児休業取得率、労働災害件数など、企業のESG関連の取り組みを示す指標は多々ある。企業の環境面での取組み、従業員に対する取組みなど様々な面を各指標は表している。中でも興味深いと考えているのは「障がい者雇用比率」である。同指標は当該企業の社会への感度やダイバーシティ(多様性尊重)への考え方を知るのに有用な指数ではないかと感じている。

日本の障がい者人口は増えており、その雇用機会を拡大させることはわが国の重要な社会的課題の1つである。厚生労働省の統計によれば、知的障がい者数は平成17年までの10年間で約4割増加した。平成21年度に、ハローワークに新規で求職の申し込みをする障がい者の数は過去10年間で2倍近くに増えている。その一方で就職率は4割未満だという。

政府は企業の取り組みを促進するため、常用労働者数の1.8%以上の障がい者を雇用することを企業に義務付けている。しかしながら、雇用率未達成となって納付金を支払っても財務的に多大な悪影響を受けるわけでもなく、またレピュテーションを毀損するわけでもないのが現状だ。法定の雇用者数に満たなかった場合は、1人不足ごとに月額5万円が徴収される。仮に1000人の会社で1人も雇用していなかったとしても、年間で約1千万円を支払えば良く、財務的なインパクトは限定的だ。雇用義務を果たさず改善努力もしない企業のリストを厚生労働省が開示しているものの、それほど大きなニュースにはなっていない。

こうした環境下で、企業の社会的責任を果たすために法定並みもしくは法定超の取み組みを行うのか、熱心に取り組まず納付金で済まそうとするかは企業の選択に委ねられる。その選択結果には、事業における責任範囲の捉え方や人材の多様性に対する考え方が反映されていよう。障がい者雇用率の高い企業は、地域社会にも配慮し、多様な人材の活躍支援に積極的な会社だと考えられる。さらに雇用率が突出して高い企業は、こうした取り組みを事業機会にも結び付けていこうとする、既成概念にとらわれ企業なのかもしれない。

障がい者雇用率が3%を超える企業ですら数少ない中で、8%を超えるのは衣類製造・販売のファーストリテイリングである。1店舗1人以上の雇用をトップダウンで決断し、数年間で実現させた。障がい者と共に働くことで、顧客への配慮なども向上したという。また、食品トレー製造のエフピコの雇用率も8%を超える。同社はトレーのリサイクルシステムを確立させたが、回収したトレーの分別の作業場などで障がい者を雇用している。緻密で忍耐力の要求される作業に適性のある障がい者の人も多いという。

障がい者雇用を促進するNGOの方にお話を伺ったことがある。障がい者の人がどうしても定着しない企業もあるといい、「障がい者雇用は企業のお行儀をあらわしている」という。社会と共存しつつ、多様な文化を受け入れなければ、企業も長期的には生き残れない時代だ。社会への配慮の度合い、多様な文化を受け入れる土壌を測るひとつの指数として、障がい者雇用率は注目される。

*この原稿は2011年6月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。
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