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CSRを巡る動き:災害と企業の社会貢献

2011年05月01日 ESGリサーチセンター


3月11日午後、マグニチュード9.0を記録する大地震が、東北地方太平洋沖で発生しました。青森・岩手・宮城・福島を中心とした東北地域各地は、地震とそれによってもたらされた大津波により、甚大な被害を受けました。この度の東日本大震災の被害を受けた皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。

震災は、4月6日時点で12400人を超える死亡者、そして15000人以上の行方不明者を出したほか、地域の社会・経済基盤を完全に破壊しました。行政機関も懸命に復旧作業を進めていますが、政府の限られた人的資源・財源ですべてを賄うのは不可能です。アメリカのリスク分析モデル会社RMSによると、東日本大震災による経済損失は最大3000億ドル(約24兆円余)規模になるとされており、政府・経済界の垣根を越えた、「オールジャパン」としての取組みが求められています。戦後最大規模の災害からの復興において、企業として果たすべき役割とはどのようなものなのでしょうか。

企業による、被災した地域社会への関わり方は、大きく「事業活動によって得た利益の還元による貢献」と「事業活動そのものによる貢献」に分けることができます。
震災後まもなく、多くの企業が義捐金の拠出を表明したことは、事業活動によって得た利益を社会に対して還元しようという姿勢の表れであると言えます。東日本大震災による被災者のために日本赤十字社に寄せられた金額は、14日から20日の一週間で約223億円となり、その多くは企業からのものであったとされています。阪神大震災の際は、二週間で約164億円といった規模に留まっていたことを考えると、わが国における社会貢献に対する意識の深化が見て取れるのと同時に、義捐金という具体的な企業活動への後押しとなっていると言えるでしょう。
金額は、企業によって様々ですが、中には義捐金に加えて衣類や飲料といった自社の製品を無償で拠出する企業もあり、企業規模に関わらず、可能な取組みを模索しようとする積極的な姿勢がみてとれます。他方で、一部の業種においては企業が一様に同額の義捐金拠出を表明するなど、同業他社との横並び意識によるものと見て取れる取組みも存在しており、企業ごとに取組みへの思いは千差万別であるといえます。

また、企業によっては、通常の事業活動をいち早く被災地において復旧させることや、被災者の利便性を高めるよう、特別な配慮を盛り込んだ製品・サービスを提供することで社会に貢献しようとする企業も存在します。
被災地においては、社会・経済基盤の復旧は、復興のために欠かすことのできない第一歩です。特に、建設、情報・通信や小売、エネルギー関連のビジネスを行なう企業は、それらが人々の生活や経済活動の基礎を担うものであることから、可能な限り迅速に被災地における事業活動を復旧することを、最優先の社会貢献としていました。更に意識の高い企業は、被災地におけるそれらの製品・サービスにおいて、被災地における困難を軽減するための配慮を積極的に盛り込んでいます。情報・通信事業者による、被災地向け特別情報サイトの運営、安否情報確認サービスの提供や、運送業者による被災地向けの物流網の優先開拓などは、単なる事業活動の拡充を超えた社会貢献の意識を感じさせるものです。

これまでも、企業の社会的責任の実践においては、「ビジネスによる利益還元による社会貢献」と「ビジネスそのものを通じた社会貢献」に関する多くの議論がなされてきました。中には、その優劣を論じるものも存在しますが、これまで普遍的に適用しうる結論はでていないようです。
企業による社会貢献のあるべき姿は、それぞれの社会からの期待によって形付けられていくものです。今回の大震災は、わが国の企業に対して「自社に対する社会からの期待とは何か」を考える貴重な機会をもたらしました。また、我々自身にとっても「社会の一員として何を企業に期待するのか」を考える格好の機会であるといえるでしょう。
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