オピニオン
オールジャパンを超えて
2011年12月06日 荒井直樹
エコシティやスマートシティという概念が普及し始めて数年が経ち、その間に、スマートグリッドやグリーン交通をはじめとした様々なシステムが提唱されるようになりました。数千兆円規模とも言われる新たな市場が創出される期待が高まっており、多くの企業においてスマートシティ専門の事業部が設立されています。
加えて、デマンドレスポンス、ダイナミックプライシング、デマンド交通といった言葉に代表される、スマートシティ市場を活性化するイノベーションの機運も高まっています。これらの技術・システムが実現されれば、低炭素社会を代表する画期的な都市が、新興国を中心に生まれる可能性もあります。
スマートシティ市場への参入を果たすためには上流行程からの入り込みが必要、と常々指摘されています。もちろん、上流行程から入り込むことができれば、様々な提案が可能となり、スマートシティの理想を追求できるかもしれません。ただ、このような取り組みができる企業は世界の中でもごく一部の企業に限られますし、また、たとえ上流から入り込んだとしても様々なハードルがあります。例えば、中国では、政府に自国産業を発展させる意向が強く、また、地場企業が実力を付けていることもあり、市場への参入障壁が非常に高くなっています。
本コラムのタイトルを「オールジャパンを超えて」としていますが、上流からの入り込みに加えて、個々の企業がいかに現地化を推進するかが重要である、ということを提言したいと思います。これまで様々なプロジェクトに携わってきましたが、提案の局面局面で、必ずコスト競争力を含めた現地での実現性が問われます。また、コストに限らず、顧客とのコミュニケーションやプロジェクトマネジメントといった部分においても影響を与えます。また、現地化を推進し、競争力をつけることで、スマートシティを積極的に実現しようとしているハイエンド市場だけでなく、アジアを中心とした巨大都市開発市場におけるボリュームゾーンをターゲットとできるチャンスが広がると信じています。
※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。