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移動用エネルギーの地産地消型観光地に向けて
~温泉熱利用発電との連携によるEV普及拡大の可能性~

2011年10月18日 秋元潤司


日本総研では環境先進観光地を目指す箱根町と「箱根EVタウンプロジェクト」として、主に電気自動車(EV)の普及計画の策定を昨年度より町と協力して進めている。
しかし、東日本大震災後に発生した計画停電や電力逼迫によって、EVが抱える問題点も意識せざるを得なくなってきた。それはEVの動力源である電気を系統電力に頼り切ることへのリスクである。

EVをはじめとした地域への電力供給リスクを軽減し、また低炭素化にも貢献する再生可能エネルギーを利用した地産地消型の分散型発電について全国的に注目が集まっている。特に箱根町のある神奈川県では、「かながわソーラープロジェクト」によって太陽光発電の導入を積極的に進めており、EVの有力な動力源としても期待されている。
しかし、霧が発生しやすい箱根町では、充分な発電量が望めないのも事実である。このため、箱根町では地域の温泉資源を活用した温泉熱利用発電への可能性を模索している。
EVに使用する電力を系統電力に頼らず、地域内の発電で賄うことで、災害時の電力制限にも対応した移動手段の確立にもつながる。実際、大震災直後の被災地ではガソリン入手困難のため、EVが非常用移動手段として活躍した。また、EVの走行に必要となる電力を全て温泉熱利用発電で賄えるようになれば、火力発電などにも頼らないことから、CO2フリーが実現することにもなる。

このような移動用エネルギー利用の実現に向けては、地域の観光事業者、特に温泉設備と駐車場を持つホテル・旅館による積極的な温泉熱利用発電設備の設置や普段のEVの業務使用などの協力が必須となる。また、観光客の理解を得られるような取り組みを地域全体でサポートしていくことで、参加するホテル・旅館を増やしていくことも必要であろう。
移動用エネルギーの地産地消型観光地への道のりはまだ始まったばかりである。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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