オピニオン
放射性物質汚染土壌の処理
2011年10月04日 西村実
9月初めに東京国際展示場で土壌・地下水浄化技術展が開催された。土壌・地下水浄化に関するわが国最大の展示会であるが、出展社数が昨年の約半数に激減していた。平成15年に土壌汚染対策法が施行され多くの企業が土壌浄化事業に参入した。新たな環境事業として期待されたものの市場規模は平成18年をピークに縮小し歯止めがかからず、昨年はピークの半分程度まで落ち込んだようだ。ここ数年、事業からの撤退や様子見を決めた企業もかなりあり、出展社数の減少に影響している。市場規模の縮小は経済環境の悪化によるところが大きいが、土壌浄化ではコストの高い掘削除去が偏重され、経済性の高いオンサイト浄化や原位置浄化等の普及に消極的だった業界側の努力不足も要因として挙げられる。現に展示会の来場者数が減少していないことを見ても、土壌浄化のニーズが減少したわけではなく、多くが手つかずのまま顕在化していないだけと考えられる。
展示会で目を引いたのは放射性物質による土壌汚染の監視や処理に関する技術である。3月11日に発生した福島第一原発事故については、現在、事故収束に向けた懸命な取り組みが進められているが、福島ひいては東日本の復興という観点では、早晩、放射性物質で汚染された土地の除染が必要になる。放射性物質自体は無害化できないので、長期にわたって厳重に封じ込める以外に処分方法はない。社会的には除染で発生する大量の汚染土壌を封じ込める処分先をいかに確保するかが課題であり、技術的には処分の前段として可能な限り処分対象となる汚染土壌を減量化することが重要となる。要するに従来型の掘削除去だけでは対応できず、掘削した汚染土壌から放射性物質を分離濃縮して減量化する土壌処理システムの確立が不可欠である。人類が経験したことのない大量の放射性物質汚染土壌の処理であり、技術革新が必要である。処理・処分には長い年月がかかると思われ、世界が注目している。将来に禍根を残さない信頼性の高い処理技術の実用化が望まれる。
※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。