コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

中国環境市場における日本企業の挑戦
-市場細分化によるコスト競争力の獲得-

2011年09月07日 北川竜太


いかにすれば成長著しい中国の環境ビジネスの市場で日本企業は競争力を持ち事業を拡大できるのだろうか? 2010年までの第11次5カ年計画期間中、中国環境市場は急速に成長した。それにもかかわらず、わが国企業の中国展開は市場拡大についていっていない印象を受ける。

原因としてよく耳にするのは、コスト競争力の問題である。「地場企業の製品と比較すると、価格が一桁違った」「これでは品質で勝っていても、さすがに売れない」と指摘する企業の方は非常に多い。
確かに、中国の地場企業の製品は低価格である。しかし、本当に日本企業にはコスト競争力がないのだろうか。私は、市場に対する見方を少し変えることで、日本の技術・製品がコスト競争力を有する市場はたくさん見つかると考えている。

その鍵は、地域性に着目した市場の適切な細分化である。特に中国では、国家が広大であり、開発の度合いも地域によって違うことを考慮する必要がある。そのため、同じ政策でも、内陸部と沿岸部、都市部と農村部では実施状況や技術に対するニーズが異なる。

一例として、汚染土壌浄化の市場を紹介したい。
現在、環境保護部が中心となり2015年を目処に土壌汚染対策関連法の策定を進めている。この第1弾として、2009年12月には「汚染場地土壌環境管理暫定弁法」の意見募集稿が公表された。この弁法の内容は、土地所有者(汚染実施者)に対して、汚染の抑制だけではなく浄化を義務付けるものである。
都市部では、政策的な郊外移転により工場跡地の宅地開発が進んでいる。開発にあたり、地方政府が工場所有者であった国有企業等から土地使用権を譲り受けることが多い。こうしたケースでは、宅地開発に伴う収入が見込まれるため、対策財源が確保されており政策の実効性が高い。また、入居者や周辺住民の苦情も懸念されるため、地方政府として対策を適切に講じる必要性が高い。
また、一般的な汚染土壌処理方法であり、コストが低い掘削除去法では、土壌の破棄先と代替土砂が必要となる。しかし、沿岸部では土地が不足しており、土地代が高いほか、輸送コストもかかるため、コスト上昇の要因となる。日本企業が技術を有する原位置浄化処理は、こうした土地の制約を受けないため、コスト競争力を有する可能性が高い。以上から「沿岸の都市部における土壌浄化事業」は日本企業にとってコスト競争力を有する魅力的な市場となる可能性がある。

地域性に着目して市場を細分化することで、これまでとは違う中国環境市場が見えてくる。そこには、日本企業がコスト競争力を有する魅力的な市場が広がっている。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ