Business & Economic Review 2011年7月号
【特集 グローバリゼーション下のわが国温暖化対策と 環境ビジネス】
気候変動問題からみた地球文明の発展と日本の将来
2011年06月24日 京都大学経済研究所先端政策分析研究センター教授 一方井誠治
1.はじめに
東日本大震災が起き、地震とそれに続く巨大津波で多くの方が亡くなり多くの地域が甚大な被害を受けた。さらに東京を中心とする関東のエネルギー源の基幹部分を担っていた福島の原子力発電所が地震と津波による被災を受けて施設が壊れ、放射線および放射性物質をきちんとコントロールすることが出来ず周囲の環境を汚染する状況が続いている。
これらの一連の出来事は、ものごとが大きな支障なく進んでいる平時には、ともすれば忘れがちな人間社会のありかた、地球文明の発展の方向という大きく重い課題を現代の私たち一人ひとりに改めて考えさせる契機となっている。もとより、喉元過ぎれば熱さを忘れるとの言葉もあるように、あと数年たち物事が落ち着いてくれば、日常の雑事に追われそれを再び忘れるのが人間であるとも言えるが、今、この時点に生きる一人の人間として、現在感じていることをまとめておくことはそれなりに意味があるのではないかと考え、本稿を執筆する次第である。もともと本稿では、自由貿易を見据えた気候変動対策の新たな枠組みと企業の対応のあり方について論ずる予定であったが、そのような事情から、ややテーマ設定が大きくなったことをお許しいただきたい。