Business & Economic Review 2011年5月号
【特集 アジア経済の新たな展開】
「輸出」される韓国の発展経験
2011年04月25日 向山英彦
要約
- 新興国の間で韓国の発展経験への関心が高まっている。恵まれない初期条件にもかかわらず韓国が短期間に著しい経済発展を遂げたこと、途上国が現在直面している問題の解決に、韓国の経験が活かせることなどが背景にある。
- 韓国政府も2004年から「経済発展経験共有事業」を開始し、自国の発展経験を積極的に伝えている。韓国政府が新興国への支援を積極化する背景には、そのことが韓国企業のグローバル展開にプラスに作用することもある。
- 新興国が関心を示す韓国の発展経験の一つは、輸出志向工業化を通じた急速な発展である。韓国の経験で見落としてはならないのは、輸出志向工業化を進める一方、農村の生活水準向上につながる政策を実施したこと、輸出産業の成長を梃子に重工業化に結び付けたことである。
- また新興国では急速な都市化に伴い住宅不足に直面しており、この点でも韓国の発展経験が参考になる。韓国ではソウルへの人口集中を緩和する目的で、ニュータウン開発を推進した。
- 新興国における住宅建設需要の高まりと国内における建設投資の伸び悩みを背景に、韓国政府・企業は近年アフリカや中近東、アジアを中心にニュータウン開発を含む都市建設にかかわっている。
- 新興国にとって韓国の発展経験は大いに参考となるが、その発展には同国固有の条件により成し遂げられた面があるとともに、問題点もあることに留意する必要がある。また韓国政府には自国の発展経験を、問題点を含めて体系化していくことが望まれる。