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Business & Economic Review 2011年5月号

【アジア経済の新たな展開】
インド経済の現状と展望

2011年04月25日 藤井英彦


要約

  1. インド経済は2010年に8.6%と再び力強い成長軌道に復帰。原動力は個人消費と設備投資の盛り上がりで、外的ショックに強い内需主導型。インドは発展段階の異なる様々なエリアが一つの国に同居する多層型経済。近年の経済成長は、デリー都市圏や隣接するハリヤナ州、あるいはインド最大の商都ムンバイ都市圏など最も所得水準が高く経済の中心として、これまでインド経済を牽引してきたエリア以外の地方経済圏の台頭が牽引役。


  2. 具体的には、①デリー都市圏の南東に隣接するウタル・プラデシュ州。②タミル・ナドゥ州やアンドラ・プラデシュ州、カルナタカ州など南部諸州。③デリーとムンバイとを結ぶ物流網の経由地域であるグジャラート州やラジャスタン州、マディヤ・プラデシュ州。④ビハール州や西ベンガル州など東部地域。


  3. 中核都市とそれを結ぶ路線を総称する黄金の四角形が成長エリア。頂点は、北のデリー、南のチェンナイ、西のムンバイ、東のコルカタ。州名に直せば、北のデリー首都圏・ハリヤナ州、南のタミル・ナドゥ州、西のマハラシュトラ州、東の西ベンガル州。頂点間には、電力消費第1位のマディヤ・プラデシュ州は南でマハラシュトラ州に接し、北はデリー首都圏の少し南に位置。電力消費第2位のカルナタカ州はタミル・ナドゥ州とマハラシュトラ州に隣接。グジャラート州は南東でマハラシュトラ州に接する。


  4. インド経済が直面する主なリスクとして、経常赤字とインフレ、財政赤字。しかし、経常赤字の根因は貿易赤字であったものの、昨年末、製品輸出が増加する一方、輸入は増勢鈍化に向かい始め、貿易構造に変化の兆し。次いでインフレは沈静化の兆しに加え、政府が価格統制を視野に強力なスタンス。さらに財政赤字では高成長復帰を映じて、このところ税収好調。いずれも問題が深刻化する懸念小。


  5. もう少し長い目でみた場合のリスクとして、電力や港湾、道路網などインフラの未整備に代表される供給制約問題。もっとも、インフラ問題の根因は資金不足であるなか、このところ成長市場としてのインド経済に着目した内外資本の流入によって資金不足問題が克服。その結果、投資が投資を呼ぶ高度成長モデルが視野に。さらに政策面でも変化の兆し。2011年度予算をみると、積極的にインフラ整備を進めるスタンスを政府は鮮明に打ち出す。電力整備を中心とするエネルギー分野、鉄道や道路整備を主眼に置く交通分野が典型例。加えて若年層を中心とした人口増加が続き、高学歴層をはじめとした質の高い労働力も豊富。リスク・ファクターが折に触れて下押しに作用する展開は不可避ながら、長い目でみて直接投資と産業構造転換によってハイペースの成長が続く公算大。
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