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Business & Economic Review 2011年2月号

【特集 グリーン・グロース実現への道】
ESG情報により進化する企業評価のフレームワーク

2011年01月25日 村上芽


要約

  1. 本稿では、企業評価の手法がESG(Environmental、Social、and overnance)情報を用いることにより進化している状況を概観し、具体的な評価の手法について検討した。


  2. ESGという用語は、国連の責任投資原則により知られるようになった。責任投資原則は、E(環境)・S(社会)・G(企業統治)に関する課題を投資判断に的確に盛り込むための基本原則であり、2010年7月現在の署名機関は784機関、保有資産残高は22兆ドルに上っている。投資家は、企業のESG情報を分析することで、企業の社会的責任の遂行状況をはじめ企業活動の全体像の理解を深めることができる。


  3. 企業評価にESGを組み入れる手法には、財務評価そのものにより企業活動と環境問題の関係を表現しようとする環境債務や資産除去債務とならんで、気候変動リスクへの注目に代表される非財務情報の分析がある。


  4. 非財務情報は金銭化が困難な情報であるため、具体的に観察・観測・分析・評価するためには何らかの指標化を必要としており、とくに重要な指標はESGのKPI(Key Performance Indicator)などと呼ばれている。欧米を中心として企業評価に影響を与えるような主要なESG情報をKPIとして特定しようとする動きが活発化している。


  5. KPIの候補項目には、既存の社会的責任投資調査機関やNGO、国際機関が考える項目だけで数百個となり、ステークホルダーごとに分類しても90近くに上る。これら現在の非財務情報であるESG情報のうち、将来の財務情報に影響を強く与える情報がマテリアリティであり、KPIである。何をマテリアルと考えるかは、企業評価の時間軸や業種特性などにより幾つかの類型が考えられるが、最終的には個々の投資家の判断にゆだねられることになる。


  6. セクター別などのマテリアリティを映し出すKPIの特定により、企業の財務パフォーマンスとの比較・相関分析、財務パフォーマンスへの影響経路の分析、E、S、Gの相互関係分析を行うことが今後の研究課題である。また、企業においては、ESGコミュニケーション能力を醸成する必要がある。
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