コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

改正省エネ法 ~初年度の提出を終えて~

2010年12月21日 中村康朋


ご存知の方も多いと思いますが、4月に改正省エネ法が施行されました。もともと省エネ法は、2度のオイルショックを経た1979年、資源輸入国のわが国において、エネルギー資源の有効な利用を推進するために制定されたものです。制定当初は、産業部門における省エネルギー推進が中心でしたが、1990年以降、民生業務・家庭部門におけるエネルギー消費の増大が問題視され、改正を繰り返しながら対象範囲を広げてきました。

今回の改正では、規制の範囲が「事業所(拠点)単位」から「事業者(企業)単位」に変わりました。これにより、改正前は大規模な工場やビルが対象でしたが、事業所全体で原油換算が年間1,500klを越えている企業も追加で対象となりました。原油換算で年間1,500klは、光熱費(電気料金・ガス料金)で換算すると年間約1億円に相当します。コンビニエンスストアで30~40店舗、ファミリーレストランで15店舗、ファーストフードで20店舗以上であれば対象になると言われています。

先月末、対象企業は、改正後初めての報告書の提出を終えました。関係者からの話を聞いた範囲内では、自社で対応された企業が7割、報告用のソフトなど支援ツールを活用しながら自社で対応された企業が2割、社外に委託された企業が1割だったようです。これまでこのような法律は自社で対応されたケースが多かったこともあり、本法律についても初年度は試しに自社で対応してみたという企業が多くみられました。

報告を終え、課題を聞くと一番に挙がるのは報告書作成における担当者への負担が大きいことでした。本来、本法律は冒頭にもある通り、エネルギー資源の有効な利用を推進することを目的としています。それが実際は報告に追われ、目的を推進しきれずにいるのです。改正により新たに対象になった店舗展開している企業の担当者の多くは総務など、これまでエネルギー分野に携わってこなかった方が対応されています。今後、本法律を推進するためにも必要となることは、一つは経営層のより一層の理解であると思います。デフレ下の厳しい環境ではありますが、本法律における社内体制の強化や、支援ツール等の導入などです。支援ツールを活用した場合、結果的に手間が減り人件費の部分でコスト削減になった実例もありました。
そしてもう一つは、報告負担の軽減ではないでしょうか。具体的には、フォーマットの簡素化が一つの有効な解決策になると思います。現状の報告書のフォーマットでは改正前のエネルギー専門家が使用していたものを使用しているため、店舗展開している企業の担当者ではエネルギーの専門用語を読み解いて報告書を作成することは大変な作業だったようです。

本法律を推進するために解決すべき課題はまだ残っています。
改正初年度の状況を踏まえ、来年度以降どう変わっていくか引く続き動向を追っていきたいと思います。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ