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「ビジネスと人権」日本上陸

2010年11月25日 竹林正人


CSRの新機軸として、「ビジネスと人権」の枠組み作りが進展しています。2008年、企業と人権に関する特別代表であるジョン・ラギー教授による「人権の保護・尊重・救済の政策フレームワーク」が国連人権委員会で承認されました。現在改訂中のOECDの多国籍企業ガイドラインや、今年11月に発行となった、組織の社会的責任に関する国際規格であるISO26000においても、理念を超えた実践の重要性が強調されています。もはや、日本企業においても「人権は欧米の価値観」と傍観していられない状況です。

日本におけるCSRは、製造業における環境汚染対策とともに深化してきました。社会面での取り組みは比較的後発であり、欧米における実践を参考に、日本的価値観を融合して形づくられてきたという経緯があります。新たな概念である「ビジネスと人権」についても、今後同様の試行錯誤のプロセスが待ち受けていることでしょう。しかし、一方で「人権の尊重はCSRの基本であり、目新しい課題ではない」とする考え方もあります。確かに、労働争議やハラスメント問題など、従来から取組まれてきた人権問題もありますが、今日的な「ビジネスと人権」において重視されるのは、それら日本的な価値観で実施されてきた取り組みを、国際的価値観によって再定義するというプロセスです。

国内市場が頭打ちとなった日本の企業にとって、海外での事業実施は珍しいものではなくなりました。新しい「ビジネスと人権」の枠組みは、これらの企業に対し、異なる文化・社会において自社のビジネスがどのように人権に影響しているかを明らかにすることを求めます。各企業では、社会的責任の範囲、そして定義についてのパラダイムシフトが必須となることでしょう。
「ビジネスと人権」の実践は、グローバル化時代の日本企業に対する、社会的感度と適応力の高さを測る試金石だとも言えそうです。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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