Business & Economic Review 2010年11月号
【特集 拡大する新興国経済と新たなビジネス展開】
新興国市場での戦略論-『多層性・土着性・未市場性』への挑戦
2010年10月25日 槌屋詩野
1.はじめに
日本企業の新興国市場への進出が、2010年上半期以降本格化している。新興国市場へ進出するうえで、生産拠点の設置や販売ルート開拓方法の刷新が求められているのはもちろん、こうした従来型の改革だけではなく、優良な新興国企業に対峙する姿勢が求められている。新興国市場の論理を理解することが難しく、日本企業は魅力と反感のジレンマに苦しんでいる。
例えば、新興国企業に対する警戒心の感情はなかなか消え去らない。2008年以降、日本企業が新興国企業に買収される案件が増加し、日本の中小企業に不安を与えている。2010年4月時点の調査では、日本企業の38.9%が新興国企業からの買収を「大きな脅威となる」と感じていると回答している(注1)。とくに製造業、建設業の4割が「大きな脅威」を感じている。「脅威」の内容として、自社経営に対するコントロールが移譲され、新興国市場の論理で事業が再編される可能性を危惧している。