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中国の農村と環境ビジネス

2010年09月07日 荒生元


中国の環境対策の重点が、都市部から農村部に移りつつあると感じます。中国の書店に行くと、最近注目が集まる「生態城市(エコシティ)」や「低炭(低炭素)」をテーマとした本と並んで、「新農村環境建設」、「農村環境汚染防止」、「新農村能源(エネルギー)利用発展」、「新農村計画設計実例」、「農村生態環境保護総合防止」など農村の環境対策についての本が多く売られています。

実際、中国政府も農村の環境対策、エネルギー対策に力を入れる方針を示しています。2007年11月に国務院が発表した「農村環境保護強化に関する意見」では、農村の飲用水源地の保護と水質改善、生活汚染・工業汚染の改善、家畜による汚染の改善などに本腰を入れて取り組む方針を示し、2008年7月には、李克強・国務院副総理が、農村環境保護を重要な戦略的位置付けとする旨の発言をしています。2008年には、農村の環境対策のための専用資金を設置し、2年間で15億元を投資し、2010年からの3年間では120億元を投入する方針です。

第11次5ヵ年計画中(2006~2010年)の重点的な取り組みにより、都市部の環境改善についてはある程度成果が出つつある一方で、農村部ではほとんど進展していない状況があります。下水処理を例にとると、都市部では、第11次5カ年計画の目標(代表的な水質の指針のひとつである、COD排出量を2010年までに2005年比10%削減)を達成するために、急速に下水処理場が整備され、2005年末から、下水処理場の処理能力は約2倍に達し、COD排出量は、2009年末時点で目標の10%削減をほぼ達成しています(9.66%削減)。一方で、農村部では、まだほとんどの地域で下水処理がなされていません。

これまで実施されてきた農村部の環境対策は、試行的なもので、本格的な取り組みはこれからという印象です。また、いずれの分野に関しても、都市部のように、採用技術に関して明確な基準がある訳ではなく、今後、地域の実情を踏まえながら適切なものを選択していくものと想定されます。日本の経験を活かし、人口分散地域に対して、効率的に環境インフラを整備するためのノウハウや技術を導入する余地があり、日本企業にとっても新たな市場として期待できると考えています。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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