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日本のバイオ燃料導入の意味

2010年08月24日 浅井康太


メキシコ湾での原油流出事故から100日以上が経ち、事態はようやく終息に向けた方向性が見えつつある。今回の一件で、石油の採掘がいかに困難な事業であるのか、改めて思い知らされた。

近年“貴重”な石油の代替手段の一つとして、バイオ燃料の導入が進められている。例えば日本では、E3と呼ばれるガソリンにエタノールが3%混合して販売されているし、ブラジルをはじめとする海外では、より高濃度のエタノール車も走っている。

導入が進むバイオ燃料の意義は、日本では地球温暖化対策の観点から語られることが多い。しかし、単純な地球温暖化対策ならば、風力や省エネ機器導入などのより安価な抑止策がある。それでは、なぜバイオ燃料を日本に導入すべきなのだろうか。

海外を見れば、バイオ燃料は「農業振興」と「エネルギーセキュリティ」の観点から語られている。例えば、バイオエタノールはブラジルのサトウキビやアメリカのトウモロコシを原料に作られており、農業振興の観点から意味のある政策であろうし、アメリカでは多様なエネルギー源の観点から評価されている。つまり、バイオ燃料は政策上のウエイトから利用されている。

では、日本では何を目標に導入を進めるべきであろうか。私は、日本でバイオ燃料を考える際の戦略は、「産業振興」の観点ではなかろうかと思う。具体的には、バイオリファイナリー(精製・改質)ではないだろうか。 これから、日本をはじめ世界各国で再生可能エネルギーの導入が進み、石油への依存度は相対的に下がっていくであろう。また、バイオマス資源も、非食用バイオマスや藻類、林地残材などこれまで使われなかったさまざまなバイオマス資源が出てくることで、石油への依存度はさらに下がるであろう。しかし、他方でプラスチックなどの原料としての代替は出来ないため、石油・バイオマスの需要がなくなることはない。ただ、これらのバイオマスはそのままでは品質に問題があり、これまでの石油インフラで大量に使用できない。なぜなら、現在のバイオ燃料は石油類似であっても、石油と同成分でないからだ。この問題を解決するための技術こそが、バイオリファイナリーなのだ。だからこそ、いずれ世界で大量に使用されるバイオマスにはバイオリファイナリーは相補的に必要になるのだ。

現在のバイオマスリファイナリー技術は研究段階で実用化はまだ先であろう。だからこそ、バイオマス資源を持たない日本がバイオリファイナリーを核として、「成長産業」としての成長戦略を描くことが重要であろうと思う。これから、新たなバイオビジネスのチャンスが広がっていくことを願っている。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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