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大気汚染対策装置の活路

2010年05月25日 金城秀樹


新聞発表によると2009年度の環境装置受注額は約4500億円。前年度比24.1%の減少、25年ぶりに5000億円を割り込む結果となった。環境対策技術の国内市場が奮わない。輸出では排煙脱硫など大気汚染対策装置が約25%の減少となった。危機感を覚える。脱硫では、かつて日本の技術力は世界で優位な立場にあった。現在では、中国に強力な競争力を持つメーカーが多数存在する。2003年に環境保護総局が火力発電所の排出SO2の数値目標を明確にしたことで、市場が拡大、多くの脱硫メーカーが参入した結果である。海外市場の競争は確実に激しさを増している。

海外での展開は容易ではない。しかし、緻密な市場分析と自社技術の強みの再認識を行えば差別化はできる。前出の脱硫では、処理に石灰石を使用するが、米国ではこの石灰石の品質が悪い。あるメーカーは低品質の石灰石でも高い脱硫性能が発揮できる点が一因となって米国でのシェアを伸ばした。
中国では膨大な数の発電所があるため、バグフィルターという煤塵(ばいじん)を捕集する装置の巨大な需要が見込まれている。近年、バグフィルターの原料繊維の調達が容易となり中国企業の参入が相次いでいる。価格では、中国製は日本製の6割程度ともいわれ、厳しい市場である。この市場で、日本の繊維メーカーが積極的に市場開拓を展開している。営業・技術の混合部隊が緻密なマーケティングを行い、製品に反映させ、高付加価値化で差別性を発揮している。低仕様化・低価格化以外にも活路はある。

ダイオキシン対策に見られるように日本の大気汚染対策技術が最も活かせるのは、プラント全体の設計・施工・調達に関与できる立場での受注である。現時点では、海外でそのような受注は難しい。だが、先進国、新興国とも大気汚染物質の排出規制はますます厳しくなる。高い排出基準を達成するには、日本の総合的なエンジニアリングを含めた高度な技術導入が必ず必要とされる。日本が持つ貴重な技術資産が海外で活用されることを期待する。



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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