オピニオン
家庭に広がる排出権取引
2010年03月24日 秋元潤司
日本の省エネ・省CO2については、他国に比べて省エネ・省CO2技術が進んでいた故に、乾いた雑巾を絞るようなものだという例えが使われるほど、削減の余地が殆どないと言われている。ただこの例えは主に産業部門を指しているように思われる。全国地球温暖化防止活動推進センターによると、確かに産業部門におけるCO2排出量は2007年時点で1990年比-3%となっており、これ以上の削減は難しいように思える。一方で、家庭部門におけるCO2排出量は同41%増とされており、今後削減が期待される部門である。ところが家庭部門におけるCO2削減手法としては、主に個々人の意識改革に任され、省エネポイント等の経済支援の動きは確かにあったが、まだ対策としては不十分に感じられる。
そのような中、日本総研で事務局支援業務の委託を受けている国内クレジット制度(*)において、「プログラムCDM」(又は「活動プログラム」)と呼ばれる仕組みを参考とした制度改定が検討段階に至っている。同仕組みは、ある条件を満たせばこれまで事業者単位(家庭の場合には個人が該当)で必要であった申請書類の作成や、エネルギー使用量の測定等を、メーカーや地方自治体などが、各家庭を取りまとめる形で代替することを可能とし、且ついつでもプレイヤーである家庭の追加参加もできる仕組みである。同制度の展開が考えられる機器としては、「太陽光発電」「太陽熱利用」「家庭用燃料電池」「省エネ家電」「電気自動車、ハイブリッドなどのエコカー」等が期待されている。同制度の利用には予めCO2排出削減量の算定方法が確立する必要があり、現在確立済みの技術は「太陽光発電」と「太陽熱利用」だけであるがその他の省エネ・省CO2機器でも算定方法が確立されれば、家庭部門におけるCO2削減の大きな牽引効果が期待できる。
環境への意識が高い人であっても個々人の改善努力だけでは、やはり限界がある。市場メカニズムを利用しつつ、産・官・民が一体となって日本の削減目標達成に?げていく本制度の更なる拡大に向けて、一個人としても微力ながら一翼を担うことを目指していきたい。
*国内クレジット制度の詳細については、http://jcdm.jp/をご参照ください。
※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。