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成熟市場における業務改革の再点検

2010年03月03日 木村典宏


 厳しい経済環境が続いている現在、企業体質を改善し収益力を高めるため、多くの企業が業務改革プロジェクトを立ち上げている。しかし、改革の対象となる現場では、改善策に労力を費やしても期待したような成果に結びつかない場合が少なくない。この原因の一つとして、成長市場における業務改革の考え方と成熟市場における業務改革の考え方を区別できていないことが考えられる。
 業務改革プロジェクトの成功は、真の課題を発見できるかにかかっている。全体最適の視点から現状分析を行い課題抽出することは、成長市場においても成熟市場においても必要である。しかし、コモディティ化が進んでいる成熟市場では単純なアプローチのみで真の課題を抽出することは難しい。

 成長市場における業務改革では、拡大する市場に比例して増大する業務量の削減を主目的とする考え方だけでも効果的な場合も多い。具体的な検討の進め方としては、次のようなイメージである。

①最初に現場作業のヒアリングを行い、作業の煩雑さや情報の管理状況、業務量の増減傾向等を調査。
②調査結果から問題点を抽出。
③抽出された問題点を集約、整理、階層化して、課題を設定。

 しかしながらこのような進め方では、結局、ボトムアップ的な考え方で検討を進めることになり、ビジネス構造全体を見直すような分析は困難であり、全体最適の視点としつつも、処理の連携性を意識した個別作業の改善以上の効果を期待するのは難しい。

 成熟市場における業務改革は、限られた市場の中で収益の向上を主目的として、業務オペレーション構造そのものを大きく変革する考え方が必要である。そのため全体最適とは、「対象となる事業において利益を拡大するために必要となる業務の仕組みが会社全体で正しく機能していること」と考える必要がある。

コア業務分析の着眼例
・機会損失の削減による売上拡大に向けたプル式供給プロセスの実現
・スケールメリットによるコスト削減に向けた本部・支店管理プロセスの統合化 等

 現状分析における課題抽出とは、この「利益を拡大するために必要となる業務の仕組み」において、不完全な部分を明確化することである。そのため、具体的な検討の進め方としては、次のようなイメージである。

①事業における収益の源泉を管理会計的要素に分解し、その要素を改善するための業務プロセスのあり方、つまり「利益を拡大するために必要となる業務の仕組み」を明らかにする。
②上記「仕組み」を構成する、物/金/情報の流れと意思決定プロセスを明らかにする。
③目指すべき姿と現状とのギャップを探るように現場作業の実態を調査。
④ギャップ分析の結果から重要性を判断して、課題を設定。

 つまり、利益の源泉となるコア業務の仕組みを明らかにすることが重要であり、その分析次第で業務改革プロジェクトが成功するかが決まってしまうのである。
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