要約
- 2020年までに温暖化効果ガスを25%削減させることが至上命題となった。
- 温暖化効果ガスを大量に排出している素材産業は、バージン原材料からの改質作業に膨大な熱エネルギーを消費する。熱エネルギーは電力のようにエネルギー源のポートフォリオを組みづらく、成長するには、熱エネルギーを大量に消費せざるを得ないというジレンマを抱えている。
- 国立環境研究所の試算などによると2020年までに5%から16%の生産調整が始まり、素材産業の一部は国内生産ができず、海外移転せざるを得ないことも危惧されている。
- これまでのバージン素材からの製品製造に加え、鉄スクラップなどの製品を電炉利用によりリサイクルすることで、CO2排出量は約11,254千トン(鉄鋼産業のCO2排出量の約6%)縮減することが見込まれる。
- わが国では、電炉利用による鉄スクラップの利用率は27%にとどまるものの、欧米では50%を超える。素材産業にリサイクル事業を組み込むことで、バージン材料から素材を生産する際に発生する熱エネルギーや二酸化炭素が大幅に削減される可能性がある。
- 非鉄産業では、素材調達、製品製造、廃棄といった“ONE-WAY”の工程に加え、廃棄から素材抽出というリサイクルプロセスを加えた“TWO-WAY”のための技術開発が早い時期から進んできた。業態展開により、DOWAホールディングなど環境リサイクル事業が企業の競争力の源泉になる企業も登場するようになった。
- わが国には、都市鉱山と呼ばれるように、高度成長期の膨大なインフラ投資による資源ストックが多い。これら再生資源が活用されていない原因としては、分別回収システムが未整備であったこと、素材情報の管理コストが高いこと、再生利用を前提とした素材製造がなされていなかったこと、静脈産業の担い手が脆弱であったこと、などがあげられる。
- ポスト京都において、単なるマクロ的な削減目標だけでなく、産業構造の特性に応じた将来に向けた先進的なビジョンを掲げ、産業界が協同して、こうしたビジョンの実現を目指すことが必要である。