Business & Economic Review 2010年1月号
【REPORT】
太陽光発電、日本の目指すべき道
2009年12月25日 創発戦略センター 研究員 宮内洋宜
要約
- これまで日本の太陽光発電市場は先行した技術開発と住宅を中心とした補助政策に牽引され、一時は世界のトップを占めていた。近年は欧州の積極的な推進政策やアメリカや中国のメーカーの勢いに押され勢いを失っているものの、巻き返しの機会をうかがっている状態である。国内市場は補助制度の復活や買取制度の導入によって再度拡大しつつある。欧州をはじめアメリカ・中国などの潜在的巨大需要地が立ち上がり、世界市場が今後も拡大していくことは間違いないと予想される。
- 太陽電池には使われる材料や製造方法などによって様々な種類が存在する。代表的な結晶系太陽電池や今後の市場拡大が予測される薄膜系太陽電池、技術開発の途上にある有機系太陽電池は、それぞれに特徴があるため単純に比較することはできず、単一の方式が主流になるというよりもアプリケーションに応じて棲み分けられるようになると考える。
- その一方で、太陽電池を評価する統一した指標として発電コストを考える必要がある。太陽光発電の発電コストは主に初期コストと発電効率に依存するが、同一の方式であれば後者に大きな差はでない。効率向上だけを目指して技術開発を行うことは、競争力獲得の戦略として合理的とは言えないと考える。
- 日本メーカーの競争力の源泉は優れた生産技術力である。開発を進める余地のある薄膜系太陽電池は、大量生産によって価格を下げられるため積極的な設備投資が必要となる。それを下支えするための需要創出を指向した推進政策が欠かせない。また、日本には強みをもった素材分野のメーカーも多数存在し、大量生産に向けてこれら企業とのアライアンスを強化することが不可欠である。さらに、広い製品ラインナップを持っていることを活かして太陽光発電をトータルシステムとして提案することも必要である。数多くの参入者がいる太陽光発電市場で勝ち残っていくためには、設備投資を躊躇して競争力を失ってはならない。