オピニオン
COP15、中国に何をもたらすのか?
2010年01月13日 于超
2009年12月7日から19日にかけて開催された第15回気候変動枠組条約締約国会議では、ゆるやかな表現の採択のみで各国からの期待に反し、実質的な成果はほぼ見られなかった。この結果は、世界第一のCDM大国である中国にとりわけマイナスの影響をもたらしかねないように思われる。
コペンハーゲン合意は政治的「協議」に止まり、その中で掲げられた中短期削減目標が法的拘束力を持たないため、低炭素関連産業に不安感を与えることとなった。事実、閉会して1週間後、ヨーロッパ・マーケットでのカーボン単価は15EUR/トンから12.5EUR/トンまで、約17%値下がりしており、取引相手がほとんど欧州諸国である中国にとって、買取量の減少と相まって、利回りの余地がかなり縮小することとなっている。
COP15の「失敗」は、先進国と途上国の対立によるものとも見られる。特に中国の場合、欧米のマスコミからのみでなく、一部の後発途上国からも批判されたことから、関連業界では今後CDM審査機関が、中国に対しより厳しい目を向けるのではと懸念している。
一方、CO2排出削減、新エネルギー使用量拡大対策として、中国国内では、太陽光や風力発電の売電価格を引き上げる動きがある。これは、リスク・コントロール、投資誘致の意味で有効な手段と言えるが、プロジェクトの収益性が上がれば、EB(the CDM Executive Board)の、「赤字」事業を補助する、という出発点から相反することとなり、事実上CDM申請を一層難しくすることになる。
今までのCDM契約は、「京都議定書」に基づき、有効期間が2008年から2012年にわたるものが多い。今回のCOP15で2012年以降に関して詳細で有力な削減規制が示されなかったことを受け、世界カーボン取引量の75%を占めるEUは、2012~2020年の間、CER(Certified Emission Reductions)の購買を中止する方向に進んでいる。これは、現在のプロジェクトのリターン確保、及び将来のCDM事業の行方を不透明なものにし、関連中国企業からは悲鳴の声が多く聞こえてくる。
勿論、長期削減目標、資金・技術支援、透明度といった面では、COP15が積極的な合意に至ったのも事実である。大きな市場をもっている中国CDM事業がこれからどうなるかは、ある意味では政府の施策次第だと考えられる。
※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。