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Business & Economic Review 1995年11月号

【INCUBATION】
容器包装の効率的リサイクル・システムの構築に向けて

1995年10月25日 事業企画部 服部聡之


1.遅れている容器包装のリサイクル

一般廃棄物の排出量は年々増加し、平成3年度には約5100万トンに達している。その一方で埋め立て最終処分場の建設は難航しており、平成3年度末の許容能力が限界に達するまでの残余年数は全国平均で7.8年、首都圏では4.8年と逼迫している。

一般廃棄物全体のうち容器包装が占める割合は容量で約6割、重量で約3割であるが、平成5年度厚生省の調査によれば、なんらかの形で資源回収を実施している市町村数は、全体の41.5%にとどまっている。またその対象も「びん」「缶」がほとんどであり、一般廃棄物全体の再資源化率は3.4%に過ぎず、産業廃棄物の39%と比べるとかなり低い状態にある。

2.期待される「容器包装リサイクル法」

このような状況下、容器包装リサイクル法が可決され、リサイクル促進による最終処分の減量効果が大いに期待されている。

・新法の全体像を図表1に示すが、ポイントは大きく以下の2点にまとめられる。
・地方公共団体は「分別収集」に必要な措置を講ずるよう努力すること。
・特定事業者(容器包装の製造又は利用事業者)は、所定量の容器包装を「再商品化」しなければならないこと。

分別収集の主体は、従来通り市町村であり、どの容器をどれだけ集めるかは各市町村の主体性に委ねられている。

3.市町村の分別収集能力の向上が課題

新法施行において、リサイクル促進の観点からは、「分別収集」と「再商品化」のどちらが課題になるだろうか。

仮に、「分別収集能力」が「再商品化能力」を上回った場合(図表2.ケース1参照)、新法では「再商品化事業者」は、不足能力の拡充に伴う処理費用の増加分が指定法人より全額補てんされることから、翌年度以降の「再商品化能力」は、増加する。したがってリサイクル促進の妨げとはならない。  一方、「分別収集能力」が「再商品化能力」を下回った場合(図表2.ケース2参照)、分別収集は市町村の自助努力に委ねられるため、市町村において経済的かつ物理的に実行不可能と判断されれば、特に措置は講じられない。その結果、「再商品化能力」に余剰が生じることとなり、この時点でリサイクル率は頭打ち状態となる。  以上のことから、新法が効力を発揮し、リサイクルが促進されるためには、市町村における「分別収集能力」の増大が最大の課題となる。

4.合理的な分別収集システムを

「分別収集能力」をアップするためには、どのようにすれば良いのだろうか。  例えば、容器包装を家庭から排出される時点から「分別基準」で指定される「白びん」「茶びん」「その他びん」「スチール缶」「アルミ缶」「PETボトル」「プラスチック」「紙パック」「段ボール」「紙箱その他」などを別々に回収する場合、システムは非常に繁雑なものとなる。そのため住民の混乱は避けられず、本来単品として回収されるべき物への異物混入の可能性は高くなる。この結果、収集した容器は、異物除去のために、再度、人手または機械による選別を行わざるを得なくなる。また、分別収集に要する車輌、人員も増え、市町村にとって相当な負担増となる。結局、負担に耐えられないと判断した市町村では、なんら追加的な措置は講じられず、分別収集能力は向上しないことになる。

このようなことを勘案すると、「びん、缶、PETボトル、紙パック」のように回収後、容易に機械選別が可能なものは、一括回収してから選別を行う方が、負荷の少ない合理的なシステムとして分別収集能力の向上につながると判断される。

5.海外で進む「容器類の一括回収・機械自動選別」

容器包装の一括回収・自動機械選別」は、すでに海外では普及し始めている。  例えば米国ではカーブサイドプログラムと呼ばれるシステムがそれに該当する。これは、住民が各家庭の前の道路脇(カーブサイド)に「びん」「缶」「PET」「紙パック」等の飲料容器を、他の生活系ごみとは分けて一括排出し、市または郡から委託された民間業者がこれを回収のうえ、リサイクルセンターに持ち込み、機械により自動選別を行うというシステムである。カリフォルニア州の例では、このカーブサイドプログラムを導入している地方自治体は87年の30から、92年の450へと、5年間で15倍に急増している。

93年に「包装廃棄物規制令」を制定しているドイツでも、DSD社によって類似のシステムの導入が進められており、すでに全包装ゴミの60%近い回収率を上げるに至っている。

6.リサイクル効率化の鍵を握る市町村の「協調」と官民の「連携」

容器包装リサイクルの促進に向けた課題が、地方自治体における「分別収集」にあることをすでに述べたが、さらに効率化を目指すためには、分別収集から再商品化までの全プロセスを踏まえたシステム構築が求められる。以下では、そのために必要な取り組みについて述べる。

(1)市町村の「協調」による効率化

「分別収集」に必要な機械自動選別装置を単独で持つことができない市町村は、他の市町村と共同で所有することや、装置を持つ民間企業に委託することも必要になってくる。その際、「びん」のみを取り上げてみても、ある市では色別にケースで回収を行い、その隣の町では色別に分類せずに袋で回収するというように、市町村間で異なる回収方式を採用したのでは、選別の作業効率は低下せざるを得ない。分別収集の効率を上げるためには、市町村の枠を越えた「協調」による品目や方式の統一化が必要となる。  市町村の協調化は、「再商品化」の観点から見ても、より多くの資源が同一の基準で、効率的に集められることに結び付くため、広域化によるスケールメリット増大を促進する動きといえ、重要である。
(2)官民の「連携」による効率化

リサイクル・システム全体から見た場合、分別収集施設から再商品化施設までの輸送距離が近いほど輸送コストが少なくて済むことから、リサイクル・コストを引き下げることが可能である。分別収集の主体となる地方自治体と再商品化の主体となる民間企業が「連携」し、地域が一体となって効率的なトータル・システムを構築することが必要である。

地方自治体単独での問題解決、企業単独での問題解決は、すでに限界に来ている。ここに述べた「協調」および「連携」をメインフレームとして、市町村および官民の枠を越えて取り組むことが求められる。
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