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Business & Economic Review 1995年10月号

【論文】
経済の国際化に伴う企業課税の在り方

1995年09月25日 調査部 小川慎一朗


要約

景気低迷が長期化するなか、企業課税に対しても、景気対策の一環として法人税率引 き下げなどを求める声が最近強まっている。 しかし、?企業収益環境の構造的悪化、[1]企業の国際化に伴う国際的な裁定行動の活発化、[2]日本市場の魅力の低下など、わが国経済を巡る環境は急変しており、経済活力の再活性化の観点から、企業課税制度の在り方自体を問い直す必要がある。

現行税制下の企業の税負担を国際的にみた場合、「実効税率」では欧米先進国の30~ 40%程度に対して、わが国は49.98%と先進国中トップクラスにある。また、新規投資に おける税負担の大きさを示す「限界実効税率」でみると、税負担格差はさらに拡大する。 国際的に突出して高い税負担を放置した場合、[1]産業空洞化、[2]新規産業の台頭抑制、[3]海外企業の対日進出減少、などの動きが加速する懸念が大きい。

また、税制度面では、[1]租税特別措置が産業間の税負担格差を生んでいること、[2]所得を課税ベースの中心に据えているため、利益計上法人に税負担が著しく偏っているなど、税負担の公平性が大きく損なわれているという問題点がある。

このようにみると、わが国経済の活力を取り戻し、国際社会に開かれた日本を実現するには、企業課税制度を以下の方向性に沿って改革することが不可欠である。

・法人実効税率を現行の49.98%から30%台へ引き下げるなど、企業の税負担の軽減を図り、国際競争力の回復、水平的な国際分業体制への移行を促進する。
・一部外形課税化も含めた課税ベースの抜本的な見直しを実施し、赤字法人と利益計上法人の間にある税負担格差の是正し、併せて税率引き下げの環境整備を図る。
・地方ごとの企業税制の独自性を高め、地域間のタックスコンペティションを促すとともに、地域間における裁定行為の幅を拡大し、経済の活性化を図る。

もとより、このような企業税制改革は、税体系全般、さらには行財政システム全体に 渡る改革に取り組んでこそ成し得る変革という側面は否定できない。しかしながら、ま ず改革の第1ステップとして、企業課税改革を企業税制の枠組み内で取り組んだとして も、次のようなパッケージを断行することにより、相当程度実効のある改革の第一歩を 踏み出すことは可能である。

その改革パッケージとは、地方税の公共サービスに対する応益性に鑑み、地方税に売 上高を課税ベースとする税率0.5%の「法人応益課税」を創設し、これにより現行事業税 の税収規模を1/3に圧縮し、さらに国税ベースでは大型の法人税減税を実施すること である。こうした取り組みにより、

・利益計上法人に対する過度の税負担軽減、
・赤字法人課税の導入による課税における公平性の回復、
・地方自主財源の拡充による税制面からの地方主権推進の環境整備、

という3大メリットの実現が期待できる。
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