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Business & Economic Review 1995年09月号

【戦後50年特集 論文】
A氏の決断-高齢社会の選択肢

1995年08月25日 社会システム研究部 高齢社会研究チーム


要約

戦後50年は日本が高齢社会に突入する助走期間でもあった。この間、核家族化、都市への人口集中といった社会的変化に加え、年金等の社会保障費の増加や要介護高齢者の増加等の高齢社会特有の諸問題がクローズアップされてきた。戦後、高齢者福祉制度が充実されてきたが、高齢化の進展は余りにも急激であり、従来の延長上の方策では対応困難な局面に達しようとしている。いわば制度疲労が生じており、新たな社会システムの構築が必要である。

高齢社会対策の閉塞感は、全領域にわたって行政主体で対応しようとするところに一因がある。この体制では高福祉=高負担の構造を取りやすく、かつ事業内容が一律的となって多様なニーズに対応し切れない。豊かな社会にあって、民間事業者の多様な事業展開による選択肢の豊富さが望まれるところであるが、消費者保護を盾に民間参入の障壁はむしろ強まる傾向にある。本稿はどこにでもいるA氏の目を通して高齢社会における選択肢の貧弱さを指摘し、選択肢を増やすための対策を提示している。

社会保障については、負担を勤労者から国民全般に広げ、世代間格差を是正するのが一案であり、医療費自己負担率のアップや消費税の引き上げを検討するのが有効であると考えられる。

介護関連事業については、みなし非営利法人化による税制優遇措置や低利融資制度の導入等により、民間事業のコストダウンを図り、民間サービス料金の引き下げを行なうべきである。たとえば有料老人ホームに公的融資制度を導入すると4割程度の利用料金引き下げも可能であり、民間により社会資本の充実が推進できる。民間企業自身には、量産化によるコストダウン努力が求められるところである。

また、高齢社会を支える構造を重層化することも重要であり、このためには民間非営利活動の推進が不可欠である。ビジネスインキュベーターに似たボランティアインキュベーターの展開や企業が従業員の福利厚生のために共同して介護支援事業を展開する等の公民双方の努力が期待される。
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