コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 1995年06月号

【論文】
地方分権から「地方主権」へ

1995年05月25日 調査部 宮脇淳


要約

日本は今、大きな試練の時を迎えている。その試練とは、戦後50年をかけて築き上げてきた既存システム全体が、経済・社会の成熟化や国際化の進展等大きな時代のうねりのなかで、深刻な制度疲労を起こしていることである。これまでに経験のない苦境を乗り越え、次の新たなステップである「活力ある高齢化社会」、「国際社会に開かれた日本」に生まれ変わっていくためには、「創造的自己改革」に取り組んで行くことが求められる。

この「創造的自己改革」を実現するため、地方分権の推進は根本命題となっている。今日直面している様々な制度疲労は、戦後のシステム全体を支えてきた中央集権自身の制度疲労ということができるからである。

中央集権型行財政は、全国的に統一・画一化された行政水準の達成という「ナショナル・ミニマム」の実現が第1に要請され、地方の実状・特性を行政に反映させる、いわゆる行政の付加価値部分にあたる「シビル・ミニマム」の追及は、副次的な位置づけにすぎなかった。しかし、国民生活の多様化・個性化が進むなかで、行政に求められるサービスの内容も、従来の統一・画一型の「ナショナル・ミニマム」の実現から、付加価値重視型の「シビル・ミニマム」追求の段階へと入っている。

「シビル・ミニマム」追求に向けた創造的自己改革の必要性を踏まえて、地方分権の真意を定義付けてみると、それは団体自治そして住民自治の強化を目指す「地方主権」の確立ということができる。経済・社会の成熟化、国民生活の多様化等が進むもとでは、「シビル・ミニマム」の追求をできる地方主権を確立することが不可欠となっているのである。

地方主権を確立する地方行財政の具体的構図を描くため、まず国と地方の関係について根本的に検討しなければならない。行政サービスの供給に必要な財源をどのように調達し配分するか「財源配分の問題」、行政サービスの分担を国と地方の間でどう配分するか「事務配分の問題」の検討である。

財源配分については、具体的には個別補 助金の補助率を低下させ交付税の交付率の上乗せ等を図ること等により一般財源の強化を行うと同時に、自主財源の拡充を行うこと、地方債市場を育成すること等があげられる。また、事務配分では、機関委任事務の削減に加え計画事務に対する実質上の制約をなくすことが必要となる。

以上のような改革等を通じ、原則自由の地方行政を確立、地方を主体とした行財政システムを生みだし「地方の飛躍」を実現することが求められる。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ