Business & Economic Review 1995年03月号
【論文】
地震予知の不確実性を許容する社会システムの提案-「新防災社会フォーラム」からの報告(2)
1995年02月25日 技術情報部 山本雅樹
要約
去る1月17日におきた阪神大震災は、死者が5000名以上を数える戦後わが国最大の災害となってしまった。この阪神大震災は都市型の地震の恐ろしさをあらためて我々に示したものであり、今後、「東海地震」「南関東地震」「小田原西沖地震」などの首都圏を襲うことが予想されている地震に対しての防災体制のあり方をあらためて考える必要が出てきている。
「地震予知」もこの防災体制の一つとして位置付け、東海地震対策としてばかりでなく、全国的な体制をとるべきだとの意見は多いが、地震予知情報が不確実性を伴う現状においては、社会がこの地震予知の不確実性を許容するようなシステムであることが必要となる。しかしながら、現状の東海地震に於ける対応措置行動をみてみると、地震予知の不確実性を無視したものとなっており、結果的に地震予知情報がうまく活かされるかどうかは甚だ疑問なところである。
このような問題意識のもと、日本総合研究所は、住友海上リスク総合研究所と共催で、昨年「地震フォーラム21」を開催し、地震学、地震工学、災害社会学、企業の防災対策、マスメディアなどのさまざまな角度から、地震予知の不確実性を許容する社会システムの必要性とあるべき姿について討論を行った。フォーラムでは主に、
・東海地震の警戒宣言時における対応措置をベースとした社会行動シナリオの検討
・社会行動シナリオに伴い発生する経済インパクトの試算
・地震予知の不確実性を前提とした新たな対応措置の提案
が行われた。
この(1)に関しては昨年のJapan Research Review 11月号においてすでに報告したが、本稿では、(2)(3)について、昨年3回にわたるフォーラムでの議論をベースとして、日本総研が事務局としてまとめ、今後の都市防災に於ける地震予知の位置付けとそれを取り巻く社会システムの提案を行う。