Business & Economic Review 1997年03月号
【PLANNING & DEVELOPMENT】
中国にみるエリア・マーケティング時代
1997年02月25日 石田賢
12億人の市場、最後に残された巨大市場、中国市場を形容する言葉には枚挙に暇がない。楽観的な見方から悲観論まで雑多な情報が入り乱れているのが実情である。また、中国における消費の普及パターンは、華南沿岸部から華中・華北へと北上し、やがて長江流域、内陸部へと浸透していくと一般的にはみられている。
最近になって中国国家統計局が中国主要35都市の家計消費動向について詳細な情報を整備し始めたことから、本稿では主要消費財としてビール、医薬品、家電製品を取り上げ、一般的に考えられている消費の普及パターンが、あてはまるのかどうか、データ面から消費の実態に迫ってみた。
この結果、中国の主要消費財の普及パターンを都市別に比較してみると、対外開放政策により繁栄している東部沿岸地域と取り残された内陸部という、いわゆる東高西低を基調としながらも、地域の特性を色濃く反映していることが明らかとなった。
こうした地域差を前提とすると、日本企業が中国市場に溶け込んでいくためには、エリア・マーケティング戦略をもつことの重要性がますます高まっているといえる。中国の地域情報を集めることとその情報の背景にある人々の生活感まで掘り起こさなければ、中国市場を開拓することはもはやできなくなりつつある。
1.ビール市場は“北高南低”
中国ではビール需要が急拡大しており、それを反映して生産量は、1995年6月の176.4万tから96年6月には前年同月比22.6%増の216.2万tに増加している。
こうしたなかで、日本のビール各社は、国内のシェア争いを投影する形で中国市場での主導権争いを展開している。アサヒ、キリン、サントリーいずれも自社ブランドによる販売を開始しており、激しい販売競争がすでに繰り広げられている。
中国の宴会では白酒や老酒等の銘酒をはじめ、さまざまなアルコールが並べられる。これらはいわゆる業務用のアルコール市場を形成しているわけであるが、ここでは、中国の家庭ではビールという嗜好品がどの程度消費され、地域別にはどのような特徴があるのかを把握し分析を行いたい。
まず、アルコール全体で消費選好をみると、中国35都市の一般家庭では伝統的な酒である白酒は消費量、金額がともにビールよりも少なく、季節変動がほとんどみられない。しいていえば、旧正月の2月には白酒、ビールともに消費量が増大する。
96年6月の1人当たり白酒消費量の多い地域をみると、
第1位 大連 0.32kg/1人・月
第2位 ハルビン 0.28kg/1人・月
第3位 貴陽 0.27kg/1人・月
第4位 瀋陽 0.25kg/1人・月
という順序である。明らかに中国東北地方で白酒が好まれていることがわかる。第3位に貴陽が入っているのは、銘酒・茅台酒の産地であることと関係があると考えられる。反対に白酒の消費量の少ない地域をみると、
第1位 福州 0.01kg/1人・月
第2位 広州 0.03kg/1人・月
〃 深 〃
〃 海口 〃
という状況となっており、温暖な地域という共通項がある。このように白酒の消費量の地域格差は歴然としている。
次にビールの消費傾向と気温の関係を検討してみよう。
まず、ビールの1年間の1人当たりビール消費量の推移をみると、2月の旧暦の正月に白酒と同様、各地域とも消費量が増大している。冬から夏に向けて気温の上昇とともにビールの消費量が増える傾向にあるのは、北京、天津、上海等、華北・華中地域であり、冬場よりも夏場のほうが4倍から14倍増え、季節変動が大きい。
ただし、これらの地域は1人当たり年間消費量が、東北三省に比べると6割前後の水準にすぎない。これは東北三省では年間を通じてビールがよく飲まれているためであり、また季節変動も冬場より夏場に3~5割増える程度と小さく、生活の中に習慣として浸透していることを表わしている(図表1)。
一方、華南地域では暑くなるからといってビールの消費量が増えるという一義的な関係はほとんどみられない。広州、深等、華南地域において、ビールの消費量は年間を通じてほとんどフラットに推移しており、気温との相関関係は見い出せない。また、この地域を東北三省・瀋陽の年間消費量と比較すると、5分の1から6分の1にすぎない。この理由の1つとして華南地域では一般的にアルコールが健康に悪いと考えられていることによる。
中国全土を鳥瞰してみると、ビールは夏を象徴する飲み物ではなく、消費量の地域格差がかなり大きいことがわかる。
では、家計消費の伸び率とビールの消費額の関係はどのようになっているのであろうか。広州や深等の華南地域では、中国の中でも消費水準が高いにもかかわらず、1人当たりビール消費額/月はいずれも1元台と低い。反対に一人当たりビール消費額/月の多い地域をみると、
第1位 寧波 7.21元(前年同月比46.5%増)
第2位 アモイ 6.11元(前年同月比 8.7%減)
第3位 杭州 5.30元(前年同月比48.5%増)
という順序となっている。いずれも華中地域であり、寧波と杭州は家計消費の伸び率以上にビール消費額が増えている。ところが、家計消費の水準やその伸び率とビール消費額の関係を中国35都市別にみると、明らかな相関関係を見い出すことはできない。
こうした背景には、これまで中国全土では家庭でビールを飲むという習慣は浸透しているものではなく、来客がある場合には外で一緒に食事を取り、あるいは企業の接待等の時にビールを飲むのであり、いずれも家計消費には含まれない、等の事情があると思われる。
96年5月31日付けの香港経済日報によると、中国35都市の1万世帯の住民を対象に行ったビール消費の実態を調査した結果、ビールを毎日飲む人の割合いは済南22.0%、成都13.6%、天津9.1%、青島7.9%、瀋陽7.3%、北京6.8%であった。ただし、この調査は96年5月時点のスポット調査であるため、1年間の変化は分からない。
このように中国の家庭におけるビール消費は、一部の東北地方や華北地域ではビールを飲む習慣があるものの、気温や所得水準の上昇との関係が明確ではないことから、まだ嗜好品の域を脱していないということができよう。換言すれば、今後所得水準の上昇にともないビール消費が増加していくことは、十分期待できる。
現在ビールの消費量が比較的多い華中地域の家庭では、所得水準の上昇とビールの消費習慣が広く定着していくにつれて、夏には需要が増大するという季節変動を徐々に顕著にしながらビールの消費量が増加していくものと見込まれる。
2.医薬品“漢方薬から西洋医薬へ”
早朝の太極拳や漢方薬に代表されるように、中国では健康に対する関心はきわめて高い。それにもかかわらず中国医薬品市場は、国の市場管理がズサンであったため混乱し、偽薬や品質の悪い薬が氾濫しているのが実情である。たとえばある企業では、有名なブランドの薬のラベルを偽薬に貼って消費者をごまかすという手段で販売することも少なくない。
もっとも、90年以降は、高価な西洋医薬も所得水準の向上から庶民が購入できるようになり、また三種類の健康保険(公費保険=公務員と国営企業従業員を対象、企業労働保険=都市部の人を対象、農村合作医療制度=農村を対象)が整備されつつある。こうした背景のもとで、医薬品市場は正常に機能しはじめ、西洋医薬への需要が増加してきたと考えられる。
年間1人当たり医療保険支出額の多い都市をみると(96年6月時点)、
第1位 海口 51.5元
第2位 深 50.6元
第3位 広州 26.1元
等であり、華南地域に集中している。華南地域の人々は、アルコールをほとんど飲まずに、ひたすら健康に細心の注意を払うというライフスタイルを持っているのではなかろうか。
医療保険支出額の内訳は、(1)医療保険器具、(2)保健用品、(3)医薬品費、(4)滋養強壮剤から構成されているが、華南地域では(3)医薬品費が全体の半分から90%も占めている。滋養強壮剤等の伝統的な漢方薬は、支出額のウエートが小さいうえにほとんど伸びていない。代わって西洋医薬が含まれる医薬品費への支出が急増しているのが特徴である。ちなみに、医薬品費の1年間の伸び率をみると、海口が5.4倍、深が32%増、広州が34%増とそれぞれ大幅に増加している。
逆に年間一人当たり医療保険支出額が10元前後と少ない都市をみると、石家庄、合肥、福州、南寧、貴陽、西寧、フフホト等、所得の低い内陸部だけではなく、所得の高い天津、上海、南京、青島、武漢、重慶等もほぼ同じように低水準である。
このように、西洋医薬への旺盛な需要は華南地域において顕著であり、華中・華北地域では医療保険への支出額・伸び率ともに低い傾向がある。今後華中・華北地域においても、所得の上昇と保険制度の整備が進展するにつれて、西洋医薬への需要も盛り上がってくるとみられるものの、現状での華南地域との差の大きさとライフスタイルの違いを勘案すると、西洋医薬への支出額の差が当面縮まることはないであろう。
ただ中国の医薬品市場を考えると、90年頃まで中国では漢方薬に比べ、西洋医薬はかなり高価なものであり、とりわけ輸入薬の投与ともなれば一部の特権階級に限られていたほどであった。それが90年代には一般家庭で購入する等、急激な変化をしてきており、今後も目を離すことはできない。
3.家電製品
1)エアコンは内陸部から沿岸部に普及
中国における家電製品の普及は目覚ましく、とりわけ都市部の主要な家電製品の保有率はほとんど100%近く、華南地域ではテレビ等の保有率が100%を超す状況も生まれている。1960~70年代には自転車、ミシン等が三種の神器といわれていたのが、いまでは電子レンジやエアコンがその仲間入りをしている。都市部をみる限り、自動車を除けばわが国とほぼ同時進行か、ものによっては先行し始めているのではないだろうか(図表3)。
中国35都市の主要家電製品(ここではカラーテレビ、ビデオ、エアコン、電気洗濯機、電気冷蔵庫の5品目)の保有状況を比較してみよう。
95年6月から96年6月までの1年間の100世帯当たり保有率の変化をみると、35都市平均では、
エアコン 1年間に9.25ポイント上昇 26.9%(96年6月)
カラーテレビ 1年間に3.73ポイント上昇 101.5%(96年6月)
ビデオ 1年間に3.60ポイント上昇 32.3%(96年6月)
電気冷蔵庫 1年間に1.86ポイント上昇 87.3%(96年6月)
電気洗濯機 1年間に0.81ポイント上昇 92.8%(96年6月)
となっている。エアコンが過去1年間で最大の普及率を示していると同時に、4世帯に1世帯強の普及状況にとどまっていることから、今後とも高い成長が期待されよう。ビデオもエアコン同様成長期にあり、旺盛な需要が見込まれる。
一方カラーテレビはすでに1家に1台以上普及し、電気冷蔵庫や電気洗濯機も高い普及率に達していることから、今後は代替需要へと落ち着いていくものと見られる。
次に主要家電製品の中国35都市における普及状況を比較してみたい。まず、エアコンの100世帯当たり保有率が高い地域となっているのは、
第1位 深 1年間に27.0ポイント上昇 124.0%(96年6月)
第2位 広州 1年間に22.7ポイント上昇 76.0%(96年6月)
第3位 杭州 1年間に19.0ポイント上昇 53.5%(96年6月)
第4位 重慶 1年間に24.7ポイント上昇 49.7%(96年6月)
第5位 武漢 1年間に25.7ポイント上昇 47.5%(96年6月)
等である。上位には深、広州等の所得が高く気候も暑い華南地域に集中しているが、華中地域では高所得といわれる上海ではなく、夏は高温多湿で有名な重慶や武漢が上位に顔を出しているのが特徴である。なお、それらに南京を加えると、中国で暑いことで有名な三大ルツボといわれている地域であり、夏に倒れる老人が多いことで知られている。
反対にエアコンの普及率が低いのは、華北・東北地域の全体と華中地域の沿岸都市部である。このようにみると、中国におけるエアコンの普及パターンは、華南地域の高所得者層に始まり、華中内陸部から沿岸部へと広がることになろう。ただし、華北地域だけは気候と所得水準の関係で沿岸部から内陸部の世帯というパターンになろう。
2)ビデオの普及は沿岸部中心
カラーテレビはすでに1世帯に1台以上と100%を超す状況であり、中国35都市を比較してみてもほとんど差異がみられない。これがビデオとなると96年6月では、3世帯に約1台とまだ低いうえに地域のバラツキが大きい。ビデオの100世帯当たり保有率が高い都市をみると、
第1位 広州 1年間に4.7ポイント上昇 66.7%(96年6月)
第2位 北京 1年間に4.2ポイント上昇 57.0%(96年6月)
第3位 上海 1年間に1.0ポイント上昇 50.2%(96年6月)
第4位 昆明 1年間に9.7ポイント上昇 46.7%(96年6月)
第5位 杭州 1年間に24.7ポイント上昇 45.5%(96年6月)
第5位 青島 1年間に8.5ポイント上昇 45.5%(96年6月)
等が挙げられ、アモイ、大連等も40%以上の世帯で普及している。昆明も内陸部では所得水準が高い都市であり、また中国沿岸部の成長の著しい地域に普及していることから、ビデオの普及と所得水準には高い相関があると考えられる。筆者からみれば、中国ではビデオを撮りたくなるような番組はまだ少ないように思われるが、所得の上昇と余暇時間の増大に伴い、ビデオ市場は今後とも高い成長が見込まれる。
ただ、こうしたなかで深、南寧、海口のビデオ普及率は、過去1年間にいずれも3%前後落ちている。この理由を的確に説明することは難しいが、華南地域ではビデオの購入目的がインフレ・ヘッジである場合も多々あるとみられ、内陸部等へ転売しているケースも十分考えられる。こうした事情が中国の消費市場を過大に評価する一因になっている。
3)ビデオの普及でみる長江経済圏の発展状況
一般的にいわれている中国の発展パターンは、改革開放路線によりまず中国沿岸部から経済発展が始まり、沿岸部から内陸部へと波及していくというものである。ここでは家電製品を代表して普及の途上にあるビデオを例にとって、上海から武漢、重慶、成都等、内陸部までどの程度のタイム・ラグが発生しているかを検証してみたい。
前述したようにビデオは中国の沿岸部で高い普及率を示しており、上海のビデオの普及率は過去1年半ほとんど横ばいで50%である。武漢、重慶、成都が1年間にどれほどビデオの普及率が上昇しているかについてみると、
武漢 2.5%
重慶 8.3%
成都 3.7%
とそれぞれ上がっている。これらの都市が同じテンポでビデオ普及率が上昇していくと仮定すると、上海の現在の水準に追い付くのは、武漢が5.4年、重慶が3.0年、成都が2.0年と計算される。
ビデオだけで中国における沿岸部から内陸部への波及状況を把握することはできないが、これらの都市が中国を代表する消費都市・上海の水準に2年から5年で追い付き、上海のような消費市場を形成していくと考えると、消費への旺盛なエネルギーを実感できるのではないだろうか。
4)カラーテレビの購入意向
前述したように、中国のカラーテレビ普及率はすでに100%を超えている。一家に2台のカラーテレビを所有している世帯は、95年末で約10%にも達している。こうしたなかで、中国ではどのようなカラーテレビが好まれ、またどのようなタイプの購入意向を強めているのか、中国国家統計局が95年末に実施した18都市、5000世帯の現地消費調査をもとに概観してみたい。
まず、これらの世帯で購入したカラーテレビをメーカー別にトップ10社についてみたのが図表4である。
日本企業では日立(第10位の福日は日立の合弁会社)と松下の2社が上位を占めている。第6位に韓国企業のLGグループ金星ブランドが入っているのも注目される。日韓そして中国地場企業の三つ巴の市場争いが展開されているのがわかる。
ところがつぎの代替購入を考えているメーカーとしては、
第1位 松下 27.9%
第2位 牡丹 7.9%
第3位 ソニー 5.8%
第4位 日立 5.4%
第5位 東芝 5.4%
等があがっており、概して日本企業に対する評価が高く、特に松下ブランドが他社に大きく水をあけている。このようにみると、現在および当面、中国におけるカラーテレビ市場を日本企業が確固としたものとしていることは明らかである。しかしながら、カラーテレビの大量生産により過剰気味ですでに値崩れを起こしており、各社慎重な生産計画を立てる必要に迫られている。
なお、参考までに上位7社への品質評価を示すと図表5のとおりである。
5)その他(ポケベル、テレビゲーム)の普及状況
家電製品のジャンルではないが、日本の若者の必需品ともいわれているポケベル、テレビゲームが中国ではどの程度普及しているかをみてみたい。まずポケベル、テレビゲームの購入価格を96年6月で調べてみたのが図表6である。
毎月の世帯収入が北京、上海の大都市では1500元から2000元であることを考えると、ポケベル、テレビゲームがいかに高価な商品であるかがわかる。最近では漢字表示のポケベルも登場している。
現段階では中国35都市のいずれのところでも100世帯当たりで1%未満の普及水準にすぎない。しかしながら、中国の一人っ子政策を反映して親が子に買い与える風潮が強いことから、ブームを巻き起こし爆発的に売れる可能性も十分あると見込まれている。業界では、中国の今年のポケベル市場規模は1000万台に達するとみており、期待の大きさがうかがえる。
地域データをとることはできないが、中国市場で注目されている携帯電話も1台1万元(日本円にして12~13万円)する商品が売れている。また、パソコン市場では、1995年末の保有台数が300万台を突破し、前年比50%以上の増加をみせている。96年も引き続き拡大すると見込まれており、96年3月16日付け経済日報の報道によると、96年のパソコン需要は150~170万台に達する見通しである。このうち20%に相当する30万台強は家庭用といわれ、一人っ子政策を反映して子供の教育のために購入しているケースが多いものと思われる。
4.エリア・マーケティング戦略のポイント
以上のように、ひと口に中国消費市場の規模や成長を期待するといっても、これだけ地域差が大きいのである。自ずと日本企業は、中国の地域特性を踏まえたエリア・マーケティングを構築していかなければならない。
このとき注意する必要があるのは、まず第1に中国では流通・販売チャネルづくりが大切であるということである。この意味するところは、ここ2、3年、中国の流通構造が大きく変わってきているために、従前の流通・販売チャネルにあぐらをかいていると、急に売れなくなるおそれがあるということである。大規模な国営企業の傘下に、同じ国営の一次卸売、二次卸売、三次卸売と地域内で秩序だっていたのはもはや昔のことで、利権をもつ人達が次々と民間の卸売会社を設立し、その地域から内陸部へとネットワークを張り巡らしている。国営の流通チャネルに固執していたためにこの動きに乗り遅れ、欧米企業に水を開けられている日本企業も散見される。
第2に、中国では地域に合った商品開発が重要である。北京で売れれば上海、広州でも売れる、というのは稀なケースである。まして日本のものを少しも手直しせずに販売するというのは乱暴である。中国の消費者ニーズを丹念に調査し、地域市場に合致した商品を開発しなければならない。地域ごとにライフ・スタイルをキメ細かく分析し、市場を創造していく必要がある。食品等、味覚にかかわる分野では、生活慣習だけでなく嗜好の違いが地域でかなりはっきりしており、差別化のための情報をしっかり収集したうえで、商品開発を行わなければならない。また、パソコン等の商品サイクルの短いものは、日本と同様、先端情報に敏感な購入者に対応しなければならず、失敗すれば在庫の山になる。
第3に、製品価格の設定の仕方においても、地域により好まれる数字(たとえば、上海では数字の8と発財〈お金持ちになるという意味〉の発音が似ていることから8)があり、価格戦略ではこれも念頭に置かなければならない。
今後中国消費市場では、地域ごとに適応したマーケティング戦略を立てることが競合他社との差別化を生み、売り上げを大きく左右する要因であるといっても過言ではない。