Business & Economic Review 1997年12月号
【OPINION】
仏作って魂入れず-店頭株式市場不振に思う
1997年11月25日
1.はじめに
平成8年度版「中小企業白書」によると、昭和60年以降に創業した企業の経営者は48.8%がスピンオフ型(脱サラ、スピンアウト等)であることが分かる。この数字から、スピンアウトした企業の規模・業種は分からないが、起業家マインドを持った(または持たざるを得なかった)人材が企業の中に存在していたことは間違いないと考えられる。また一方で、社内起業家の育成を掲げて「社内ベンチャー制度」を実施している企業が数多くある。これらの企業の中には具体的な成果が何も出ずに途中で頓挫してしまったところもあるが、制度を継続している企業の多くは起業家意識を持った社員が社内ベンチャーを成功に導いてくれることを期待していると考えて間違いない。
このような現状を踏まえ「社内ベンチャー制度」を見直すことで、企業内に潜在的に存在する起業家やその可能性のある社員(以下、社内起業家)を効果的に発掘し、社内起業家としての成功を支援できないかを考えてみた。
2.社内ベンチャーの現状
1995年11月29日付け日経産業新聞記載の日経産業消費研究所の調査によると、社内ベンチャー制度を導入している企業は調査回答企業404社(東証1部、2部上場企業およびそれに準ずる企業)のうち、約10%であるとの結果が出ている。該当する企業名が公開されていないため詳細は不明だが、書籍や雑誌またはインターネットのホーム・ページ等で紹介されている事例から、制度のいくつかを把握することができる。制度の内容や運用方法の違いから事例を整理すると、次の3つのタイプに分類できる。
最初は、企業のトップやそれに近い人がアイデアを出しトップの指示で事業化プロジェクトの責任者が決まるタイプで、トップが強いリーダーシップを発揮し急成長している企業によく見られる〈aタイプ〉。このタイプの制度を持つ企業の多くは成長市場に属し、トップもオーナー(創業者またはそれに準ずる人)である場合が多いと言える。純粋な社内ベンチャーとは言えないかもしれないが、その制度により?起業家としての可能性を持つ社員が創業経験を積み事業家として自立できる、?他の社員も事業家として自立することのメリットを認識する、ことが可能であると言える。
2つ目は管理職や一般社員がアイデアを出し発案者が事業化の責任者となるタイプで、歴史のある成熟した大企業に見られる〈bタイプ〉。このタイプの制度を持つ企業の多くは成熟市場に属し、社内に創業経験を持つ人材がいない場合が多いと言える。これらの制度は社内から出てくる事業化のアイデア募集を最も重要視しており、事業化後のインセンティブや事業の評価基準をあまりオープンにしていないものが多い。制度の趣旨が、自立した社員の輩出や企業家マインドの育成と言うよりも、新規事業の発見と事業化そのものにあると言える。もし、新規事業だけが目的であれば、成長の可能性の高い事業を外部から探してきて買収する方が手っ取り早く、わざわざ社内ベンチャー制度で事業を立ち上げる必要性は乏しい。
最後のタイプは、事業化のアイデアを社内だけでなく社外からも募集し、社員・外部の人材を問わず発案者が事業化の責任者となるタイプで、起業家の育成に熱心なオーナー経営者に見られる〈cタイプ〉。このタイプは特殊なケースで、企業の内部環境が独立起業家(企業をスピンアウトして起業する人)を輩出する外部環境と同一化するための制度となっている。
これら3つタイプの比較から、社内ベンチャー制度の目的を「新規事業の探索と事業化」「社内起業家の輩出」の2つに分けて整理すると下表のようになると考えられる。
このように整理することで、他の制度に比べてbタイプの制度はその効果が十分に出せておらず、その内容も検討の余地が残されていることが分かる。そこで、bタイプの制度に焦点を当てて、これを新しく構築し直す際の考え方を検討してみることにする。検討に際しては、aタイプ、cタイプの制度を参考にするとともに、米国における独立ベンチャー企業を支援する環境についても参考にした。これは、社内においてベンチャー企業を起こす場合であっても、できるだけ外部環境に近い環境を企業内部につくることで、社内の起業家の意欲やベンチャー制度への信頼を高めることが可能であると考えるためである。
3.独立ベンチャーの成長支援
米国における独立ベンチャーの成長事例から、その成長を支援するシステムを見つけることができる。以下にベンチャー企業成長の各ステージに対応して、どのような支援策がとられているかを見ていく(注)。
(注)独立ベンチャー成長事例の以下の整理については1996年10月21日に京都リサーチパークで行われた次の講演会を参考。
テーマ;米国経済を支えるベンチャー企業
講演者;Raymond R.Hood (Neptune社 President & CEO)
1コンセプト・ステージ(Concept Stage)
事業化のアイデア段階であり、企業としてスタートする前の段階を言う。このステージでは、事業化のためのアイデアを持っている人が、自分のアイデアを信じて行動を起こすことになる。その際に実施すべきことは、a.事業化のアイデアを書類レベルでデザインしながらターゲットにする顧客を決める、b.ビジネスに対するトレーニングを積むことの2つで、これらを支援するため次の公的サービスが行われているケースが見られる。
- 主にアイデアを商品化するためのマーケティング分野でのコンサルティング
- ビジネストレーニング(創業経営者に必要な知識とスキルの習得)
- ビジネス情報の提供(どこに行けば法律家などの専門家がいるか等)
2ロンチ・ステージ(Launch Stage)
書類レベルのアイデアを基に事業計画を作成し創業に至る段階を言う。この段階では事業化のプランをできるだけ多くの人に見せ、それらの人から信用を得ることが重要となる。これにより、創業に向けての資金供給者の発掘を行うとともに顧客開発を行う。この段階の支援として次のものが行われている(政府または民間が実施)。
- 政府、個人投資家による資金面での援助
(ただし、個人投資家の援助は出会いが前提となる。出会いの場は起業家が自ら見つけなければならない)
- 事業化に必要な機器や設備を安価に提供
- 法律家や会計士等の専門家ネットワークによる支援
- マーケティング分野でのコンサルティング
(製品・サービスの価格決定やニッチ市場探索等)
3アーリー・グロース・ステージ (Early Growth Stage)
事業を軌道に乗せるまでの段階を言う。この段階では、製品・サービスに対する顧客の獲得が全てであり、そのためには社員の採用や追加資金の投入が必要となる。これらが追いつかなければ、一時的に成長を押さえる必要も出てくる。
また、企業としての信用確立の基礎を築くのもこの段階であり、経営情報の公開が重要となる。この段階において実施されている支援は次のものがある。
- 人材を採用するうえで重要となるストック・オプション等による制度的支援
(主に財務、マーケティングの専門家)
- 起業家マインドを持った人材が集まる場の存在
- ベンチャーキャピタルや個人投資家による資金提供
(このステージにおいても起業家との信頼関係がベース)
- ベンチャーキャピタリストによる経営支援(役員会への参加)
4レイト・グロース・ステージ (Late Growth Stage)
ある程度事業が軌道に乗った後、急速に規模を拡大し企業としての基盤を確立するとともに、これまでの投資を回収する段階。この段階は社員数が急激に増え、取引数も飛躍的に増えるため、マネジメント・システムが重要となる。経営者が自分の会社ではないような気持ちになるのもこの段階からであり、従業員や顧客に対して企業ポリシーや価値観提供の必要性を認識する。また、規模の拡大のために新たな投資が必要となるため、これまで取引のなかったベンチャーキャピタルや商業銀行が頻繁に接触してくる。そのため、資金の調達手段は安定してくる。この段階で実施される支援には次のものがある。
- 優秀なマネージャーを採用するうえで重要となるストック・オプション等による制度的支援
- ベンチャーキャピタリストによる経営支援(役員会への参加)
なお、マネジメント・システムの構築はビジネスベースでサービスが提供される。
(5)株式公開
株式公開のための準備から公開までの段階を指す。この段階において経営者の多くは株式公開後の自分の役割や能力等を再度評価し、マネジメント・チームの方向性を決定する。
また、公開のための準備作業に追われ本来の経営活動が疎かになる可能性があり、マネジメント・チームの協力がより重要になる。この段階は既に〓支援〓の段階ではなく、ビジネスベースで全てのサービスが提供される。
4.社内ベンチャー制度の構築の方向性
本節では、前節で解説した独立ベンチャーの発展段階に照らし合わせて、社内起業家を発掘し社内ベンチャーを成功させるための制度の考え方を検討してみたい。なお、ここで対象としている企業は先に記述したbタイプの制度を有する企業である。
1コンセプト・ステージ
社内ベンチャーにおけるコンセプト・ステージは、社内でアイデアを募集し、その中から審査に通ったものに関して新規事業化を承認する段階を言う。このステージは、社内起業家から見れば〓社内ベンチャー制度〓の有益性を判断する段階であると言える。
先に記述した中小企業経営状況実態調査からも明らかなように、昭和60年以降平成7年までに創業した企業の50%近くがスピンオフ型の創業である。このことから、社内起業家の発見の可能性はあると考えられる。また、現実に若い世代のサラリーマンであればあるほど独立願望が強いこともあり、これらの人材を募集に駆り立てることができればコンセプト・ステージは成功したと言えよう。
このステージを成功させるためには、次の2つの問題を解決していく必要がある。
a.社内起業家を発見する、または駆り立てるシステムになっているか
既に新製品やサービスのアイデアを持ち、起業の意志がある社員や、意志はなくともアイデアは持っている社員は必ず社内にいる。しかし、これらの社員が会社の呼びかけに対して自ら名乗り出ず、折角の素晴らしいアイデアを埋もれさせてしまうのは残念である。
このような社員は社内ベンチャーに全く関心がない訳ではなく、社内ベンチャー制度に魅力を感じないか、制度を利用することに対して不安を抱いているためである。この不安に感じる要因を、組織風土を構成するいくつかの要素に照らし合わせて見ていくと図表3のように整理することができる。
これらを改善するためには、社内ベンチャーといえどもできるだけ独立ベンチャーに近い自由な環境で経営できる制度にすると共に、親会社の資金や人材、信用等が活用できる制度的支援を設ける必要がある。特に、社内ベンチャーが別法人として自立するまでは、事業を孵化させる機能を持った独立した組織の中で活動ができるようにすることが重要となる。
また、社内起業家の持つアイデアを製品化するための支援やビジネス・トレーニングを受けるための支援など、社内ベンチャーの立ち上げを側面でサポートする制度の充実も必要になる。
なお、このステージで、アイデアを持っていても自分で起業する意志がない人材が発掘できる場合もある。その時は、社内での製品化を目指すことでアイデアや人材を生かすことになり、社内ベンチャーの支援制度とは別に制度を設ける必要がある(発案者が製品化のプロジェクトに参画し、製品化が完了し事業化の目処がついた段階で再度、社内ベンチャー制度の適応を検討できるようにする、等)。
これら社内ベンチャー制度に織り込むべき支援策等の詳細は、次のステージ以降で記載する。
b.発掘したアイデアに対して適正な評価やアドバイスができているか
社内ベンチャー制度で発掘できた事業化のアイデアも、審査段階で日の目を見なくなるケースが見受けられる(事業化のアイデアが認められなかったために、自ら起業し成功している人もいる)。通常、アイデアの評価は「直感」を必要とする場合もあるため、審査の妥当性を判断することは難しい。しかし、「直感」というものが審査員の知識や経験および普段からの問題意識から来ていることを考えると、事業化のアイデアをできるだけ多くの人の目に触れさせ、その可能性を評価することが望ましい。特に、実際に創業を経験した経営者やベンチャーキャピタリスト等の外部の専門家を審査委員に加えることで、審査の妥当性が増すと言える。米国のベンチャー企業の例を見ても、コンセプト・ステージにおいて、できる限り多くの信頼できる人に事業化のアイデアを見てもらうことが、製品やサービスを完成させるスピードを早め、ターゲットを絞りやすくしている。多くの専門家が審査することで、より多くの目でアイデアを評価することができるとともに、次の募集に再度チャレンジするためのアドバイスも得られやすくなると言える。
2ロンチ・ステージ
社内ベンチャーのロンチ・ステージは、審査を通過したアイデアを基に事業化のための活動に入り、製品またはサービスを完成させ、併せて最低1社程度の顧客を獲得する段階である。このステージでは、事業化のための社内プロジェクトを認知してもらい、法人設立の準備をすることになる。また、製品・サービスを完成に近づけるため、テストマーケティングを行うとともに顧客獲得のため、外部とのネットワーク拡大に奔走しなければならない。このステージにおいて必要となる制度的支援や考え方は以下のものが考えられる。
a.リーダー
事業化を推進するリーダーは発案者が行う。ただし、発案者の希望で別にリーダーを決める場合は、発案者が推薦した社内の人材で、本人が了承した場合に限り共同推進者として認める。これは、独立ベンチャーにおいても、発案者が経営者となり企業を起こす場合と、発案者が自分のネットワークの中で適任者を探し共同経営する場合の両方が見られることから、これに準じる対応をとることが妥当と考えるためである。なお、リーダーや共同推進者は別法人化するまでは親会社の社員で活動し、別法人になった時点で転籍とする方が良い。
b.資金
資金面での支援は、社内ベンチャーが独立ベンチャーに対する優位性を示す意味で重要である。資金面の支援は、スタート段階での投資が中心で、金額にして1千万円から1億円の額が多い。この時、社内ベンチャーをできるだけ独立ベンチャーと同じ環境におくということを考えると、リーダーもある程度の投資を覚悟すべきである。その範囲は出資金(株式会社でスタートするのであれば1,000万円)を親会社と折半する程度が妥当であると思われる。これは、自らが独立して企業を起こすよりも、少ない資金で社内ベンチャーが起こせることが重要と考えるためである。なお、初期投資金額の使途や、次のステージ以降の投資はビジネス・プランに基づいて行うことになるため、プランの作成が重要である。
c.専門家による支援
社内ベンチャーは、原則として発案者がリーダーとして活動することになる、この場合、リーダーは製品開発に長けてはいても財務やマーケティングの知識・能力がない場合が多い。社内からこれらの専門家をプロジェクト・メンバーとして受け入れることができれば問題はないが、通常はできない。そのため、リーダー自身が専門知識を勉強して対応することになる。先に記述した米国の独立ベンチャーの場合、専門家の支援が得られやすい環境になっており、これと同じような環境を企業内に実現できれば創業までのスピードが早まる。
社内で対応可能な支援策としては、a.専門家への支援依頼に関する情報提供、b.専門家への依頼費用の補助などが考えられる。
d.人的協力
独立ベンチャーであれば、このステージで人材を採用することは難しい。そのため、個人的なネットワークの中から人材を見つけてきて協力を依頼しなければならない。しかし、社内ベンチャーの場合は支援制度しだいで、親会社からのスタッフの採用ができる。
事業化のためにスタッフが必要な場合は、親会社の社員を本人の承認を得て採用できるようにする(社内公募)。その際、親会社の社員は出向か転籍かを選択できるようにし、その後のインセンティブに差をつける。また、親会社の社員へ時間外に協力を依頼したり、仕事の委託ができるようにすれば、社内ベンチャーの活動状況を社員間にも浸透させることになり効果的である。
e.設備
会社内部の設備・機器で未使用中のものや使用されるものでも時間外に利用できるようにする。それにより、余計な資金の支出が抑制される。
f.組織
企業内に社内ベンチャー事業化のための独立組織をつくり、別法人化するまではここで活動ができるようにする。社内起業家にとっては、社内ベンチャーを別法人化するまでの仮の身分となる。
3アーリー・グロース・ステージ
社内ベンチャーのアーリー・グロース・ステージは、製品やサービスが完成し最初の顧客獲得ができた段階から、事業が軌道に乗る(単月度黒字となる)までと考える。事業体は別会社化されている。
親会社はこのステージを事業継続のための評価期間とみなしている。そのため、ステージの最終段階で社内ベンチャーとして存続させるかどうかの判断を行うことになる(社内ベンチャーをスタートして約3年目)。評価のための指標は、利益の額や率、成長率などがあるが、最も重要なのは損益が単月度黒字に至ったかどうかであると言える。単月度黒字になっておれば、減価償却費分以上にキャッシュ・フローが上向いており、資金の余力が出てきたと考えられるためである。 このステージで親会社の支援が必要となる分野は、以下の通りであると考えられる。
g.資金
このステージで使用できる資金はスタート時にその額が決められる。そのため、この範囲で資金を使っていかなければならない。ところが、3年目ともなると資金を使い果たしてしまい、後の手が打てなくなるケースも発生する。その場合、追加投資を依頼しても決裁が降りなかったり、降りたとしても時間がかかり手遅れになるというケースも考えられないことはない。このようなことがないよう、追加投資できる額の範囲と基準を事前に決めておくことが必要となる。これは、社内ベンチャー企業の存続の判断に先立って行われる。
h.経営ノウハウ
このステージになると小規模企業の経営ノウハウが必要となる。ロンチ・ステージであれば、通常の事業開発と同じ感覚で運営できるが、アーリー・グロース・ステージ以降は資金の残高を踏まえての経営になるため、毎月のキャッシュフローに重点をおいた経営になる。こうなると、創業経験のある経営者か、または創業を支援したことのある専門家でなければ経営に関するノウハウを提供できない。
社内ベンチャー企業の場合、親会社内部にこのような人材を求めても無理であり、経営ノウハウを習得するためには社外の専門家に頼るしかない。米国の独立ベンチャー企業がベンチャー・キャピタリストを積極的に活用しているように、専門家の協力を仰ぐ方が得策である。創業に関する外部の専門家を役員会等に参画させることで、都度発生する問題への対処が可能となり、創業経営のノウハウを習得するスピードが早まる。
i.スタッフ
ある程度販売がうまく行けば業務が急速に拡大する。そうなった時に、スタッフとして活動できる人材が不足してくる。親会社が事業存続の最終判断をする前でもあるため、外部からの人材の採用はまだ難しい。この段階では、多少なりとも親会社からの人的サポートが得られるようにしておく必要がある。
4レイト・グロース・ステージ
社内ベンチャーにおけるレイト・グロース・ステージは独立ベンチャーと同じく、ビジョンやマネジメントシステムの構築および資本政策の確認が必要となる。特にマネジメントシステムの構築に関しては親企業のノウハウが活用できるため、効果的な支援ができる。
資本政策については、アーリー・グロース・ステージの最終段階に行われる存続の評価の際に、株式公開の有無の決定とともに方針を決定する。その際、社内ベンチャーを引っ張ってきた経営者(もと社内起業家)や親会社から転籍した幹部・社員に対するインセンティブを考慮し、持ち株数または買い取り価格(親会社が株を買い取る場合)を決定する。
以上、社内に存在する社内起業家を発掘し、社内ベンチャーとして成功させるために必要な支援制度の考え方について述べてきた。これらの狙いは、起業願望を持つ社員に対して、独立ベンチャーを起こすよりは社内ベンチャーの方がメリットが大きいと思わせることにあり、これが可能であれば社内に眠っている人材を生かすことに繋がると考えられる。
5.おわりに
社内ベンチャー制度は、横並び意識が強く集団を優先させようとする企業風土の中では効果が薄いと考えられてきた。しかし、その一方でこのような組織風土を打破しようと社内ベンチャー制度を導入し、組織の活力を引き出そうとしている企業がある。社内ベンチャーを成功させるには、まず最初の1社をつくることが重要であり、そのためには一人でも多く社内ベンチャーに手を挙げさせるような仕組みを明示することが必要ではないだろうか。