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Business & Economic Review 1997年06月号

【論文】
未熟練外国人労働者受け入れ制度の問題点について
-未熟練労働者の在留資格に関する国際的視点からの考察-

1997年05月25日 野瀬正治


要約

労働力の国際化において、わが国では未熟練外国人労働者の扱いが問題となっている。

すなわち、わが国では未熟練外国人労働者政策において、研修の概念と労働の概念の区別が不明瞭であるので、本来労働者として検討すべき未熟練労働者が研修生として捉えられてしまい労働者としての検討ができない。

現在、研修生の中で労働者としての性格の強い研修生は、在留資格が研修であるため労働者ではないとして労働政策としての議論には入れられておらず、さらに在留資格の議論も労働者の議論とは別のものとされている。

また、国際的な視点に立って考えた時、わが国の現在の在留資格研修のあり方は妥当とはいい難い。

国際的視点で考える場合、未熟練外国人労働者に対する諸外国の考え方は、国連での移住労働者権利条約の適用対象をめぐる審議に集約されており、受け入れ国側の考え方は、条約の適用対象者の範囲を合法的な制限により限定していく考え方である。一方、送出国側の考え方は、自国を離れて生計を立てる自営業者の保護までも含めるもので、広範囲に弱者の保護を求める考え方となっている。

両者の隔たりは大きいが、受け入れ国側においても、公正な考え方に則って規制しようと考えている点は明確であり、少なくともわが国のような研修生概念の拡大による規制の考え方はない。国際的視点に立てば、現在のわが国の研修生の大半は移住労働者権利条約第2条の2-g限定雇用労働者といえる。

つまり、国際的視点で把握すれば、わが国における研修制度は、研修とはいうものの、期限付・限定の雇用・帰国が前提で、ある一定限度を超えて延長の可能性がない未熟練外国人労働者の受け入れ制度になっている。

すなわち、わが国の在留資格研修における研修生の実際の概念は国際的にみれば、すでに未熟練労働者も含んだ概念であるといえ、それは移住労働者権利条約のTraineeとは言えず、むしろ限定雇用労働者と言える。

国際的斉合性の視点から考えると、わが国が適正な外国人労働者政策を立案・実施できるようにするには、労働者としての資格が明確になるように個別の在留資格等を設定し、現行の在留資格研修における不明瞭な対象者に適用させることが必要であり、さらに労働者としての受け入れの是非について一貫した議論をすることが検討されなければならない。

今後、わが国では高齢化・介護問題・女性の社会進出・少子化・生産年齢人口の減少等の問題が益々大きくなっていく。またその一方では現在、規制緩和のなかで外国人研修生・実習生のさらなる活用が検討され量的拡大が進行しつつある。

研修生を労働力としても利用するといった現状の考え方では、わが国の外国人労働者政策を正面から適正に立案できない。国際的視点に立って今後のわが国の外国人労働者受け入れ制度を検討する時、適用対象が広い研修制度はグローバル・スタンダードに則った施策への脱皮が必要な時期にさしかかっている。わが国は、国際社会のなかで、わが国の労働市場全体を視野に入れて外国人労働者政策を確立させなければならない
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