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Business & Economic Review 1997年05月号

【論文】
新しいアグリビジネスが先導するわが国の農業改革
-新しいビジネスの調整メカニズムが日本農業を変える-

1997年04月25日 大澤信一


要約

1990年以降のいわゆるバブル経済崩壊後、わが国の流通業から製造業にみられた大調整メカニズムは農業の生産、流通分野にはきわめてわずかしか認められない。これは従来わが国の農業の中にビジネスの要素が極端に乏しいこと等によるものと考えられる。 本稿では90年以降にみられた次の4つの事例を通してアグリビジネスによる農業再生メカニズムについて検討する。高度な栽培、飼育技術を持つ日本農業の潜在力が生かされていない原因はどこにあるのだろうか。

1.90年以降の輸入野菜急増は、従来型市場流通システムが消費の激変を生Yまで十分に伝え得なかった結果でもある。この原因としてわが国に農業の生産から販売までのトータルな青果物供給ビジネスが育っていない点を指摘できる。
2.ある有機農産物宅配大手企業はその20年にわたる川上、川下への垂直分社化戦略で、農業をビジネス化するうえでの独自の困難性を解決し、また農業のもつ多様な要素の事業化に成功している。今後の新しいアグリビジネスのプロトタイプとなり得るものと考えられる。
3.「カジュアルフラワーマーケット」という新市場創造プロセスでは、アグリビジネスにかかわる起業家が決定的に重要な役割を果たしている。わが国農業の生産、流通を大きく変えていくのは「上」からの農業改革ではなく、これら起業家のマイナー・ブレークスルーの集積である。
4.現在開発中の通信衛星による花バーチャル市場は、農産物流通に画期的な効率化をもたらす可能性がある。またここでは農産品のローカルな市場取引がわずか数年でグローバル市場での取引に変り得るという現実が、卸売市場法等、現行の法規制に抜本的な改革を迫っている。

以上のような事例を踏まえて、わが国農業を再建するための方策を検討すると、次の4点が指摘できる。

1.わが国の農業を市場原理で律すべき部分とその他の部分に区分けし、農業問題に対する具体的な検討可能性を高めるべきである。
2.わが国の農業再建を担う新しいアグリビジネスは少なくとも、
・農業生産と流通・加工が融合した事業形態
・地域に根差しその特性を生かした事業戦略
・自由な企業活動の保障と自己責任の原則
3.株式会社の農地所有可否の問題は現行農地法を改正したうえで、各地域(市町村)が権限と責任をもって、個別的に結論を出すべきである。
4.青果物流通については流通チャネル多様化に向けて規制緩和を進めるべきである。
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