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Business & Economic Review 1996年04月号

【論文】
NTT地域網ボトルネック論のパラダイム・シフト

1996年03月25日 事業戦略研究部 鈴木祥子


要約

昨今のNTT経営形態の在り方議論は、NTT経営形態を変えることでわが国の電気通信事業の・造問題が解決できるという前提でなされているように思われる。しかしながら、現在求められて いるのは、わが国の電気通信市場の活性化を通じた消費者利益の向上である。NTT地域網ボトルネ ック、すなわち「NTTが管轄するネットワークに対していかにして競争状態を引き起こすか」とい う課題の解決こそが、NTT経営形態の在り方議論の解決の鍵を握っている。

電気通信規制・政策と、電気通信事業特有の要因がNTT地域網の独占状態をもたらしてい るが、この地域網に競争を導入する方策として、[1]NTT網と新規参入業者(NCC)網の相互 接続の多様化、円滑化、[2]料金リバランス、[3]規制緩和、[4]代替手段の育成、の4点が考えられ る。このうち短期的に最も実効性の高い相互接続の多様化・円滑化は、NTTの加入者線開放、 相互接続料金(アクセスチャージ)の引き下げによって95年以降急速に進展している。

加入者線の開放および相互接続料金の低下が図られた現在においてもなおNTTの地域網が注目 されているのは、その市場シェアの独占性よりもむしろ、来たるマルチメディア時代には、顧客 とネットワークでつながり、顧客のニーズを直接に把握できる事業者が、競争上優位に立つこと が認識されつつあるからである。

アメリカの最近の動向をみると、マルチメディア化を反映して情報通信分野に新規事業者が 次々と参入し、顧客ニーズに応えている。この結果、AT&Tによる地域網の自然独占が崩れつ つある。

わが国においても来たるマルチメディア時代には、地域網は自然独占でありボトルネックは不可避とする従来の考え方から、行政・事業者共に脱却する必要があろう。今後の行政に望まれるのは、NTTに対抗しうる第二勢力の育成を図るための環境を整備することである。具体的には、[1]地域網への競争創出のための規制緩和、[2]地域網競争時代におけるユニバーサル・サービスの在り方の再検討、[3]公正取引委員会の機萩ュ化、である。
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