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Business & Economic Review 1996年03月号

【INCUBATION】
動き出した日本のエレクトロニック.コマース(2)

1996年02月25日 事業企画部 新谷文夫


エレクトロニックコマース市場」における三つの「戦略」

21世紀の新しい産業として期待の高い「エレクトロニックコマース」の市場をインキュベーションするための三つの戦略は前号で述べたとおり、.「異業種コンメ[シアム」による「市場開拓戦略」、.「複合商業機萩ヤ」による「市場誘発戦略」、.「プロシューマ型開発」による「市場創造戦略」である。多くの企業が「エレクトロニックコマース」事業推進プロジェクトを形成し実証実験への取組みを開始しているが、これら3つの戦略をプロジェクトに内包させているか否かは、プロジェクト成功の可否を握る重要なファクターである。まず、第一に「異業種コンメ[シアム」であることは、特に「コンテンツ、サービス」企業にとって重要である。「インフラ、ハード、ャtト」を提供する企業との戦略的提携によりより良い「商品プレゼンテーション技術」を活用することができるからである。また、第二に「複合商業機萩ヤ」であるか否かは、特に「エンドユーザ」にとって重要である。「インターネット」が提供することができる「サーバースペース」は、現実の世界でも実現することが可狽ネ、単なる「ショッピングモール」機狽ナはない。現実の空間では実現できない機煤i複合商業機煤jを提供することが「サイバースペース」の特長であり、「エンドユーザ」は、その特長が生み出す付加価値を楽しむことができるからである。そして第三に「プロシューマ型開発」であるか否かは、特に「インフラ、ハード、ャtト」企業にとって重要である。インターネット関連技術の進歩は「日進月歩」という言葉でも阜サできないほど早く、単に技術開発競争に取り組むだけでは競争優位に立つつことはできない。いかに「コンテンツ、サービス」を提供する企業と一体となってニーズの先取りをし、自社技術の「デファクトスタンダード化」を目指すことが重要だからである。

日本における「エレクトロニックコマース」推進プロジェクトの現状

それでは、げ得ん実に三つの戦略を内包するプロジェクトは存在するのであろうか。インターネット.ホーム.ページでは、老舗ともいうべき「凸版印刷」の「サイバー.パブリッシング.ジャパン」や「野村総合研究所」の「サーバービジネスパーク」等は、第一フェーズから第二フェーズへと移行しており、現段階では、日本で最も進んだ「電子ショッピングモール」を提供するグループであると推測される。そのどちらもが、異業種企業が参加するプロジェクトであり、その意味において第一の戦略である「市場開拓戦略」を遂行するプロジェクトであることは間違いない。また、第一フェーズにおいて、インターネット上に商品を陳列することにより「電子ショッピングモール」を形成、電話やファクス等での商品購入を可狽ニし、第二フェーズではその「電子ショッピングモール」からオンラインで「発注、決済」を行うことが可狽ネサービスの提供を行うと推測される。第三の戦略である「市場創造戦略」をセキュリティ技術の分野で行うプロジェクトとして位置付けることができよう。このように、少しづつ進化を遂げる日本のエレクトロニックコマース推進プロジェクトではあるが、残念ながら第二の戦略である「市場誘発戦略」に取り組むプロジェクトはホームページを開設していないのが現状だ。

「電子ショッピングモール」は市場をインキュベートするか?

インターネット上の商業空間の代名詞として「電子ショッピングモール」という言葉が使われている。そして、現在の「電子ショッピングモール」はその特徴から、ふたつに分類される。一つは、紙媒体である「カタログ誌」を電子メディア化したものであり、もう一つは、「百貨店」等を仮想現実感技術により三次元で阜サし、電子メディア上でウィンドウショッピングを可狽ニするものである。しかし、どちらも「商業空間」としては、実存する「カタログ誌」や「百貨店」等より優るという評価の得には至っていない。逆に、電子ショッピングモール」に出店している「テナント企業」にとっては「商品売上」がほとんどない状態であり、評価は落ちつつある。これは、日本におけるインターネットの普及率が低いことにも起因することであり、必ずしも「カタログ.ショッピング」空間や「ウィンドウショッピング」空間であることだけが原因ではない。しかし、「カタログ.ショッピング」であれば無料で入手することができるカラフルなカタログを、気楽に眺める方が楽しいことは想像に固くなく、また、「ウィンドウ.ショッピング」であれば、人が行き交い活気が存在する百貨店等、現実の商業空間に出向く方が楽しいことも容易に想像できる。即ち、エンドユーザの心理の問題なのである。このことは、現実の商業空間をインターネット上で再現することにより新たな市場をインキュベーションすることの限界を示している。

第二の戦略、「複合商業機萩ヤ」の形成とは?

単に「商品を陳列および販売」という機狽セけでは、「エレクトロニックコマース」は実現されない。インターネットだからこそできる「商業空間」が形成されることにより初めて「エレクトロニックコマース」が産業として花開くのである。商品と代金の交換をする「ショッピング」機狽ェ基本機狽ナあり現実の商業空間でも行われているとするならば、この基本機狽ニともに、電子メディア上でエンドユーザに提供されるべき機煤Aインターネットだからこそ提供できる機狽ヘ何かを明らかにすること、そして、エンドユーザに「複合商業機萩ヤ」を提供することが「エレクトロニックコマース」推進の鍵だ。具体的には、次の三つの機狽ェ考えられる。一つ目は、「エクスポ」機狽ナある。エンドユーザの心理からすれば、商品を購入するときには、同種の商品を比較することを望む。インターネット上でこのニーズに応えることは難しいことではない。商品コンテンツを必ずしも、ひとつのサーバー上に掲載する必要はなく、ハイパーテクストであることを助ェに活用して、様々なサイトとのリンクにより同種の商品を一望できるようにすることが可狽セ。そして、二つ目は「フォーラム」機狽ナある。商品の購入に際して、他の人間の意見を参考にしたいというエンドユーザのニーズに応える機狽ナある。評論家やエキスパートが雑誌等のメディアで語る批評ではなく、エンドユーザとして、草の根的な意見を知ること、また、意見を述べることは時として評論家の批評を聞くことより価値がある。更に、このフォーラムが進化していくとメーカーの開発者とエンドユーザが商品開発に関して意見を交換することができる三つ目の機煤A即ち、「商品開発」機狽ヨと進化していく。例えば、「この商品の10年後はどうなるか。」といった設問に対して、エンドユーザは、商品に対する夢をフォーラムのボードに書込み、企業の開発者は技術的な視点からその実現可柏ォをフォーラム.ボードへと書き込む。そのようなプロセスを経て、10年後の商品がイメージされ開発へと結びつく。そして、翌゚エンドユーザの知恵が織り込まれた商品が開発される。このような開発が実現するならば、今までのマーケティングのパラダイムは大きく変わる。商品開発のプロセスがすでにマーケティングとなっているからである。その意味でインターネット上に「複合商業機萩ヤ」を形成することの社会的影響は大きいと考えられる。「スマートアイランド.コンメ[シアム(日本総研主催:53社参加)」は、「複合商業機萩ヤ」の形成に向けての仮説を本年2月1日に開設した「スマート.アイランド」ホームページに提示した。皆さんのご評価をいただければ幸いである。(図参照)

最後に

第三の戦略である「プロシューマ型開発」は、エンドユーザが楽しく、安全に「複合商業機萩ヤ」に参加するために欠かせない。

次回は、「プロシューマ型開発」により開発推進されるべき技術についての紹介を行う。
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