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Business & Economic Review 1996年02月号

【論文】
新年世界経済の展望-持続的成長の実現に向けて正念場の年

1996年01月25日 調査部


要約

94年にようやく同時調整局面から脱した世界経済は、はやくも試練を迎えている。その背景には、先進国を中心に各種国「問題の改善が遅れていることに加えて、世界的な規模での大競争(メガ・コンペティション)が一段と激化しているという事情が挙げられる。

すなわち、先進国経済は、自国経済を活性化させ大競争時代を生き抜くために、財政赤字の削減に真剣に取り組んでいるが、それに伴うデフレ作用に見舞われている。加えて、雇用情勢の改善遅延が景気回復の足枷となっている。一方、アジア経済は、90年代入り以降目覚ましい成長をたどるなかで、今後の持続的高成長の阻害要因として作用しかねないいくつかの問題が露呈し始めている。この意味で、96年は先進国、アジア諸国ともに、「持続的成長の実現に向けて正念場の年」となるといえよう。

新年の世界経済をみるうえでのリスク・ファクターとしては、アメリカにおけるミニ・バブルの崩壊、欧州における金融・為替市場の混乱、メキシコ型金融不安の再燃、ロシアにおける経済改革路線の頓挫、等があり、これらの動向が世界経済の攪乱要因として作用する可柏ォがあろう。また、より中期的観点からみると、アメリカを中心に保護主義圧力が強まるなかで、今後、これをいかに抑えて自由貿易体制を強化できるかが、世界経済の発展の鍵を握ろう。

96年の世界経済の行方を展望すると、まず先進国に関しては、各国とも景気の減速傾向が一段と鮮明化することが卵zされる。すなわち、アメリカ経済は、在庫調整の終了や設備投資・輸出の堅調持続が下支えとなってリセッションに突入する公算は小さいものの、財政赤字削減策の実施によるデフレ作用、家計のバランス・シート悪化、住宅投資・耐久財消費の循環的な下降局面入り等の景気抑制要因により、拡大ペースは95年対比鈍化する公算が大きい。また、欧州経済は、経済・通貨統合に向けて財政運営スタンスの緊縮化が一段と強化されるもとで、各国とも実質成長率は2%強へとスローダウンすると見込まれる。

一方、アジア諸国は全体としては高成長を持続するものの、先進国経済のスローダウンを背景とした輸出環境の悪化に加えて、内需も減速することを主因に、成長ペースは95年対比若干鈍化する見通しである。また、国毎にみると、95年は各国ともおしなべて好調であったのに対し、96年は、産業空洞化が経済成長に影を落とすNIEs、引き締め政策により調整過程に入るマレーシア・タイの先発ASEAN諸国と、調整が本格化する中国、直接投資の一段の増加に伴い成長が加速するインドネシア・フィリピンと、グループ毎に景気の明暗が分かれることになろう。

以上のような新年の世界経済の姿を踏まえると、日本として取り組むべき課題は、第1に、日本経済の本格的回復のために、 資産デフレの調整、 国際水平分業推進に伴う産業国「調整、 新産業の成長を通じた産業国「転換、の3つの国「調整を進めること、第2に、社会保障システムの抜本的見直し等公共部門のスリム化・効率化を通じた「財政リエンジニアリング」の断行により、経済の再活性化を図ること、第3に、自由貿易を促進するために、自ら進んでWTO体制の基盤強化に取り組むこと、が求められる。
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