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Business & Economic Review 1996年01月号

【論文】
「民間維新」の新活力創造に向けて-マルチメディケアを礎とする21世紀社会

1995年12月25日 調査部


要約

1990年代入り後、景気低迷の長期化、経済・企業活力の国「的低下が明らかになるなか、政府に対して抜本的な国「改革を求める声が高まったものの、期待された国「改革は遅々として進展していないのが実情である。その意味で、民意と政策意思との乖離を埋めることが、真の国「改革を実現する第一歩となる。具体的には、既存政党が広範に民意を汲み取る国民本位の政治体質に転換すること、政府が政策の限界を認め、これを果断に民間に明らかにする「政策のディスクローズ」、が必要である。これからの国「改革は、もはや民間自身の手に委ねられるべきである。そのため、小さな政府の実現、市場経済原理の貫徹、国際的ハーモナイゼーションの達成、を3本柱に、民間の創造性に富んだ活力が自由に発揮される環境を創出することが政治の使命である。

こうした認識に立脚しつつ、民間主導の経済・社会改革、「民間維新」を進める場合に重要となるのは、規制緩和は、その実施がとりわけ大きな効果が期待される分野を特定し、当該分野で集中的な規制緩和を行い、真の規制緩和実現の突破口とする「ブレイク・スルー型の規制緩和」、財政バランスの失衡が常態化する状況下、現存資源の効率的活用の観点から公的部門が担ってきた分野を民間に市場開放し、民間活力の呼び水とする「公的セクターの民営化(内なる市場開放)」、企業立地を国際的裁定のなかで決定するグローバリゼイションの潮流のもと、過度の企業流出抑制と外資参入の活発化を促すため、税制をはじめとする各種競争条件の国際的均衡を図る「経営インフラの国際的調和」、の3点である。

以上のような国「転換が着実に進展した場合にコア・インダストリーとして有望なのが「情報通信(マルチ・メディア)」と「医療・介護(マルチ・メディケア)」である。そのため、これら両分野に対して、次の通り、ブレイク・スルー型の規制緩和等、必要施策を集中実施し、現下のわが国経済・社会の閉塞状態を打破するトリガーとしなければならない。

まず、情報通信分野では、現行の業態別縦割り行政を抜本的に見直し、通信・放送の融合を通じたマルチ・メディアの多面的発展を促すために、一元的な法制度のもと、自由で競争促進的な市場環境を創出する、マルチ・メディア産業発展の基盤となる光ファイバー網の整備事業者に対して、民間資金による1兆円程度の無利子融資を実現する新融資制度を創設する、等が重要である。それによるマルチ・メディア産業の発展は、次の医療・介護分野の改革のうえでも不可欠である。

一方、医療・介護分野は、現行制度を温存し21世紀の超高齢化社会を迎えた場合、その破綻は必至であり、次のような形で新システムを導入することが極めて重要である。

「家」・「地域」を核としたマルチ・メディアを基礎に、地域社会や産業活動に対して開かれた医療・介護システム「マルチ・メディケア」を穀z。これにより、多様化する国民的ニーズに柔軟に対応できる選択性に富んだ医療・介護システムを実現し、同時に国民負担の上昇抑制を図る。

「何時でも・何処でも・誰でも」安心して診療が受けられる社会保険制度を基礎に置きつつも、保険対象領域・公定価格制度の多様化等、諸規制を積極的に見直すことにより、医療・介護分野をオープンシステム化。具体的には、医療法人・訪問看護派遣事業への民間資本導入、カルテ・介護記録等の情報開示による医療データの共有化、遠隔医療・診断の拡充、混合医療の検討、病院給食のセントラルキッチン方式拡充による居宅高齢者に対する食事サービスの提供、薬の宅配、等の規制緩和を実現。

こうしたオープン型マルチ・メディケアの穀zは、国民福祉の向上や経済・社会の活力高揚に資するほか、日本に続いて急速な高齢化を迎えるアジア諸国に対し、ハード、ャtトをトータルで提供する国際貢献型輸出産業を創造することになろう。
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